タカノフルーツパーラーで店長をしていた創業者の内田睦男さんが、1981年開店。「当時ライトなコーヒーが主流だったころ、オールドビーンズという長時間自然乾燥させた豆の深煎りコーヒーに出会い衝撃を受け、この豆を使用した深いコクと透明感のあるおいしいコーヒーを提供したいとの思いから始めたと聞いています」と懐かしそうに話される幸子夫人。そして多くの人が憧れる井の頭線沿線に出店したいとの希望があったと言う。また、お店こだわりの甘さ控えめな手作りケーキは、ブレンドコーヒーとの相性がよく素材にこだわる。少しだけ食べたい方には、一口サイズのフルーツケーキがおすすめだ。ちょっとしたお土産にもなる。
店内の照明は電球色でクラシック音楽が流れていてゆったりと過ごせる要因になっている。そして所々に飾られた絵が落ち着いた雰囲気を醸し出している。カウンター席の他に壁で仕切られたテーブル席がある。入り口近くの外の光が入る席、テーブルを囲むような席など用途が広がる。仕切りの壁には空洞がありカウンターから全体が見渡せるようになっている造りだ。丸い柱は柔らかさを表現し開店当時からのレリーフが埋め込まれている。壁の色と同じ白だったのが、30年以上たち亜麻色や飴色のようになり歳月を感じさせる。
「つい先日、開店当初からほぼ毎日約10年間来店していただいたお客様がお嬢様と突然現在お住まいの山口県からお見えになりました。その頃お子様が幼稚園児でしたので成長ぶりに驚きました」と幸子夫人。一方、お客様は、久我山駅は新しくなったものの街全体の雰囲気は変わらないと当時を懐かしんで、また住みたいと帰っていったそうだ。店内に公衆電話がなくなったりと時代の変化に沿いながらも変わらない魅力ある喫茶店。亡き創業者の遺志を継いで大切にしながら続けてこられた味であり店内の雰囲気。お二人の集大成なのかもしれない。