阿佐ヶ谷駅北口のスターロード商店街はずれの住宅地にある「ヴィオロン」は、36年続く(平成28年現在)名曲喫茶。店内奥正面には、巨大な蓄音器とスピーカー。ほの暗い店内は、音楽に浸るにはもってこいだ。
創業者でオーナーの寺元健治さんは、学生時代から名曲喫茶に親しみ、「音楽の素晴らしさを1人でも多くの人に伝えたい。お世話になった名曲喫茶の音を残したい。」という思いから昭和55年に開業。阿佐谷を選んだのは、学生時代に暮らし、町の雰囲気が好きだったからとのこと。手回し式の蓄音器は世界最大級のもので、生演奏に近い音質が楽しめる自慢の品。スピーカーは、手作りである。壁の内部を空洞にするなど、音響へのこだわりも徹底している。不思議な構造は、有名なコンサートホールを模したもの。蓄音器のある場所がステージというわけだ。
店内では、好みのLPレコード(持ち込みも可)を、家庭では味わうのが難しい音響で楽しむことができる。月に一度催される蓄音器によるSPレコードの演奏会は、音楽好きには聴き逃せないイベントだ。希少価値のあるレコードを、最も適した針で再生するのだそう。「生演奏に近い音をぜひ体験してほしい」と寺元さん。(第三日曜午後6時より演奏会)
喫茶メニューは飲み物のみで、一律450円。食べ物は持ち込むことができ、一度料金を払えばその日は出入り自由という柔軟さが面白い。好きな時に音楽を楽しんでほしいという心配りを感じる。コーヒーにはブランデーを入れることができ、この店の名物。寺元さんが学生時代通っていた名曲喫茶でよく飲んでいたという思い出の一品だ。
午後6時からは開店当初から続く「ヴィオロン」のもう一つの顔、ライブタイムだ。飲み物付1000円で、プロ、アマを問わず毎日様々なジャンルのアーティストの演奏が楽しめる。「気軽に立ち寄り、生の音楽を楽しんでほしい」と寺元さん。「ヴィオロン」は音楽だけでなく、人との出会いの場でもあるのだ。