杉並浄水場と取水井

小尾嘉郎の昭和初期の作品

杉並区の西南の端にある善福寺公園。その近くに東京都水道局の杉並浄水場があります。昭和の初めに、当時の井荻町が善福寺池の湧水で独自の水道を開設する事として、昭和5年に工事を開始し、昭和7年に東京市水道局へ移管したものです。23区内唯一の地下水源として、現在でも周辺の地域に給水されています。

この浄水場の管理棟が、隠れた名建築なのです。設計者は不明ですが(※)、管理棟が建てられた昭和初期は、荻窪電話用事務室のところでも触れたように、インターナショナルスタイルの全盛期。この管理棟も、低層陸屋根で、アールのついた部屋を設けるなど、モダンなスタイルでまとめられています。管理棟の手前に見えるろ過池(現在休止中)を建物の形に合わせて扇型にしているところにセンスが感じられます。
ここより少し後に建てられた山口貯水池(狭山湖)の管理事務所も超モダンで、この頃の水道施設がデザイン面にも力を入れて建てられていた事がうかがえます。現在は、外壁がクリーム色に塗装されていますが、竣工当時は、もっと白くてオシャレだったかも知れませんね。

また、善福寺公園内の内田秀五郎像のすぐ脇には、取水井が2基あり、柵越しに確認する事が出来ます。ここからモーターポンプによって地下水をくみ上げています。こちらの施設も6角形のかわいらしい建物です。浄水場の生みの親でもある内田秀五郎さんに見守られて、これからもおいしい井戸水を供給してくれることでしょう。  

設計者が判明!

杉並浄水場の設計者がわかりました。
建築家・小尾嘉郎(おび かろう)について詳細な研究をされている佐藤嘉明氏が、論文の中で「小尾嘉郎の昭和初期の作品としては井荻浄水場(※)の上屋が残っている」と記しています。昭和7年刊の『井荻町第一期水道抄誌』に嘱託職員として小尾嘉郎の名前が載っていることからも、小尾の設計であることはほぼ間違いないでしょう。ちなみに、小尾嘉郎は、昭和3年竣工の神奈川県庁本庁舎の設計に携わった人物として有名です。

※現在の杉並浄水場

DATA

  • 住所:杉並区善福寺3-28-5
  • 最寄駅: 西荻窪(JR中央線/総武線) 
  • 取材:石渡玲子
  • 撮影:石渡玲子
  • 掲載日:2007年12月28日
  • 情報更新日:2021年08月29日