25mプールほどの広さの貴船神社(きふねじんじゃ)は、近くにある和泉熊野神社の境外末社(※)である。創建は文永年間(1264-75年)といわれるが明らかではない。
かつて境内には「杉並区和泉」の地名の元になったとされる泉が湧き出ており、小さな池をつくっていた。この泉に関して、次のような民話がある。
「喉の渇いた農民が農作業の帰りにこの湧き水を渇んだところ、顔が赤くなった。湧き出ていたのは水ではなく清酒だった」
本務社の宮司は、「それくらいここの水はきれいだったということでしょう。」と語る。泉は昭和40年くらいまで湧き続けていたが、「神田川の護岸工事による地盤沈下などが原因か枯れてしまった。」とのこと。平成に入り、せめて池があったことがわかるようにと、ひょうたん型だった池の跡を石造りで残したそうだ。普段は枯れ池だが、雨上がりに訪ねると雨水が溜まっていることがあり、かつての様子がしのばれる。
御祭神は京都の貴船神社と同じく雨乞いの龍神、高龗神(たかおかみのかみ)。地域の人は豊穣を授けてくれる神として信仰していた。昔は日照りが続くと、いったん池の水をかき出し、水の無い池の中で雨乞いをしたそうである。言い伝えでは「すると本当に雨が降ってきた」との話も残る。現在は5月5日に、氏子が参列し神職が祝詞を上げる地元密着の例祭が行われている。
※境外末社:けいがいまっしゃ。本社に付属する小社のうち、本社の境外にあるもの
御祭神
高龗神(たかおかみのかみ)
主な行事
5月5日 例祭