高井戸駅から徒歩約15分、高井戸警察署並びの井ノ頭通り沿いにオーデリック株式会社(以下、オーデリック)の本社ビルがある。山形県東根市と東京都羽村市に工場を持ち、照明器具のデザインから設計・製作・販売まで一貫して行う「あかり」の専業メーカーだ。
本社ビルの2階と4階はショールームになっており、約3,000点の照明器具が展示されている。最新製品の紹介のほか、クリスタルガラスを用いた高級シャンデリアのコーナーや、リビングやキッチン等のモデルルームで実際に照明の具合を体感できるコーナーなどを備え、さながら「あかりの博物館」のようだ。連日、家族連れ客などを中心に、照明器具について専門アドバイザーの意見を求める人でにぎわっている。
経営企画ゼネラルマネージャーの田中氏は、オーデリックについて次のように話す。「わが社は単に照明器具を売っているのではありません。「あかり」は安全性を高めるだけでなく、人々に快適さをもたらし、癒やされる空間をつくります。家族や働く人たちの安心感や労働意欲にも結び付くでしょう。一人一人のライフスタイルを豊かにする提案をしているのです。」企画、研究開発、デザイン、設計、生産から物流までの一貫体制によって、自社で全責任を持つという方針が、それを可能にしていると言う。さらに、厳格な品質管理体制を確立することで、安心・安全で快適な生活をサポートする製品を送り出しているのである。そんなクラフトマンシップ(職人技)を持つ専門プロの集団であることがオーデリックの強みだろう。
1996(平成8)年、照明だけでなく人の住まい全般に関わる事業を目指し、現在の社名に変更した。この社名に込められた精神について、田中氏は、「オーデリック(ODELIC)の「O」は旧社名「オーヤマ照明」の頭文字、「DE」は楽しみ・喜びを意味するDELIGHT、「LI」は生活を表すLIFE、そして「C」は創造を意味するCREATIONのそれぞれの言葉をつないだもので、快適で豊かな生活を創造することで社会に貢献していく企業姿勢を表しています。」と教えてくれた。
ショールームに入ると、個性的なデザインの照明器具に圧倒される。低消費電力と長寿命という特徴から普及が進み、今や照明と言えばLEDが当たり前となったが、オーデリックでは機能面に加え、空間を演出するアイテムとしても優れた各種LED照明を開発している。商品の企画時にはユーザーのニーズを最重視。「どんなに素晴らしいデザインであっても、利用者の求めるものでなければヒット商品にはなり得ません。無駄な機能を詰め込んで使いづらくならないように、操作性などを試行錯誤を重ねています。 」
また、2011(平成23)年の東日本大震災以降、日本では節電の意識がより高まっている。省電力には、不要の時に照明のスイッチを切ることが最も効果的だが、その手助けになるのが自動で点灯・消灯・調光する「センサ機能」だ。オーデリックの「センサ機能」への取り組みは早く、1990年代から行ってきた。近年は、床面照度をセンサが自動感知し照明を自動調光する「照度センサ」や、近くの人を感知して必要な範囲を照らす「人感センサ」も登場。また、タブレットを使って手元で家中の照明を操作できる便利なシステム「CONNECTED LIGHTING(つながるあかり)」のほか、1日の時間帯ごとの明るさをプログラミングすることでオフィスや店舗を自動調光できる「タイムライン機能」など、節電に役立つ新たな技術も生まれている。
生活を豊かにするデザイン性に優れた照明器具のほか、エネルギー消費を抑えた照明器具の開発や普及に努めるオーデリック。田中氏は今後の目標として、「今は売り上げの3分の2程度を住宅向けの製品の比率が占めていますが、今後の需要動向などを踏まえて、店舗や商業施設、オフィスや工場といった非住宅分野の照明に、さらに力を入れていく予定です。また、東南アジアやインド、中東にも展開を始めています。」と話す。 明かりの防犯効果を生かした安心・安全な社会作りも使命であると考えているそうだ。
はるか昔より暮らしの中心には「あかり」があった。オーデリックが作りだした「あかり」は、今日も街のあちこちで人々をやさしく照らしている。