本屋、はじめました

著:辻山良雄 (苦楽堂)

2016(平成28)年1月に、荻窪に開店した小さな新刊書店「Title」。この本の著者であり書店主の辻山良雄さんが厳選した書籍が並び、近隣のみならず北海道や九州といった遠方の読書好きが足を運ぶ。小さくとも個性がキラリと光る書店は、どのように誕生し経営されてきたのか、辻山さんが子細もらさず記したのがこの本である。「Title」のすべてがわかるとともに、本屋を単に本を売るだけの場所でなく、店主と本と読者に出会いを提供する、本好きにとってかけがえのない場所にしたいという辻山さんの飽くなき情熱に触れられる。
著者インタビュー
「開店する場所は、ほぼ一日店にいることになるので、疲れない街を探して荻窪に決めました。中央線沿線は昔から好きな場所で、なじみがありました。古本屋が多く、作家や編集者など本に関わりのある人が多く住み、本が生活に密着している感じがして、商売もやりやすいと。これからは、杉並の地域活動へも積極的に参加したいと思っています。この本は自分の体験が、書店を開きたいと思っている人の参考になればという思いで書いたものですが、何かを始めようとする人にとっても役に立ってもらえたらうれしいです。」
おすすめポイント
少年時代から本が身近にあった辻山さんが書店開店に至るまでの経験と、その経営の舞台裏がシンクロして、本好きを惹きつけ、「Title」がより身近な存在に感じられてくる。開店場所探しから始めて、理想の店が次第にできあがっていく過程の詳細な描写は、店の前史といったところ。新刊書の仕入れ方やブックセレクション(※)など興味深い話題も多く、店からの読者への招待状と呼ぶのが似つかわしい一冊だ。

※ブックセレクション:本を置いてみたいという店の依頼を受け、店舗のコンセプトに合わせて本をコーディネイトする仕事。


▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のアートスポット>Title

DATA

  • 取材:村田理恵
  • 掲載日:2017年11月20日