創業者の柴田豊氏は戦前、愛媛県松山市で呉服屋を営んでいたが、繊維相場での失敗を機に、一旗あげようと全財産を持って南米に渡った。現地で日系移民コミュニティに属していた時に、これからは出版業が社会に大きく貢献するとのヒントを得て、帰国後の1949(昭和24)年、3歳から5歳児向けの絵本『チャイルドブック』を発行した。当時のチャイルドブックも今の絵本と同じくイラストが多用された、6ページ程度のカラーの絵本だった。
現在、『チャイルドブック』の出版権は他社に譲っているが、出版業務は継続している。さらに、『Child ばんびーに』という乳幼児の子育て応援冊子を、保育園や幼稚園等を通して無料配布している。同誌は、子育ての悩みについての相談、親子の触れ合いができる手遊びの紹介、絵本の読み聞かせのコツなどの記事を掲載。これは、保護者にダイレクトに情報を発信し、チャイルド社の活動をもっとよく知ってほしいと始めたそうだ。その他、子供のイヤイヤ期の対処方法、叱り方のポイントなどをまとめた冊子も、インターネットを通して販売している。
現社長の柴田豊幸氏は、2006(平成18)年、荻窪駅北口の教会通り新栄会に保育園「パピーナ荻窪園」を開園した。保育事業を始めたのは、保育園や幼稚園と関わる仕事の中で学んだノウハウを生かし、地域に貢献することが目的だったという。現在は、チャイルド社の企業理念を保育理念とした、豊幸氏が総園長を務める保育園を、高井戸など杉並区内7カ所で運営している。
保育園では、周囲の人々だけでなく、草花や昆虫などの自然にも思いやりや優しさをもてる心を培えるように、まごころのこもった保育を心がけているとのこと。「遊び、食事、睡眠をバランスよく取り込むことが、子供の健やかな体作りに大切です。子供の可能性を広げるために、豊かな夢も育てていきたいですね」と豊幸氏は話す。
保育士資格を持つ豊幸氏は、講演などを通じて、保育園に子供を通わせる保護者から、教育問題などについて相談を受けることも多いそうだ。
これまでは保育園や幼稚園に対しての限られたサービスがメインの業務だったが、今後はセミナーや講演会を通じた保護者向けのサービスも展開していきたいと、豊幸氏は言う。少子化や待機児童問題など、育児に関するさまざまな課題が社会の関心を集めるなか、長年、幼児教育・保育に携わったチャイルド社の発信は、保護者も信頼でき心強いことだろう。また、共働きの保護者が増えている今、孫育てにあたる祖父母も増加傾向にあることから、時代に即した『孫育てQ&A』冊子の販売も検討中とのこと。なんとも頼もしい限りだ。
この他、チャイルド社では、室内遊具や備品、玩具、保育室用家具、園庭遊具、園児の制服の販売に加え、園舎の設計や登園バスの紹介なども行っている。同時に、保育園・幼稚園での事務処理のためのコンピュータソフトの研究開発にも携わり、その販売や活用の手助けをするなど一貫した体制を整えている。このように「園のお役に立つこと」(豊幸氏)につながる事業の多角化を進めてきたチャイルド社であるが、今では本社ビル内に関連会社として保育士資格を持つ弁護士事務所も設け、「幼児教育・保育」に関することなら何でも相談できる企業として、幼児教育の発展の一翼を担っている。