成宗囃子

何度かの中断を乗り越えて継承

成宗囃子(なりむねばやし)は、旧成宗村の本村周辺(現成田東五丁目付近)で、成宗須賀神社の氏子が中心となり明治初期に始まったとされる。第二次世界大戦中など何度か中断し、昭和50年頃に復活した。地元には最近まで阿佐ヶ谷住宅など大規模な団地があり、住民の入れ替わりが激しい地域ゆえ、活動の継承には苦労してきたという。今は成宗囃子保存会として、子供たちや若い世代の育成に力を入れている。
復活に際し大宮前郷土芸能保存会より師事を受けたことから、早間船橋流(※1)の流れを組む速いテンポが特徴である。成宗須賀神社で行われている稽古には、地元の子供たちや古くからの住人だけでなく、転居して新たな住民となった人も参加している。2017(平成29)年11月に開催された「第33回杉並郷土芸能大会」(※2)では、大人に混じり小学生2名も出演。緊張した面持ちながら、息の合った演奏を披露していた。

※1 早間船橋流:千歳村船橋(現世田谷区船橋)の内海軍治朗が確立した、テンポの速い囃子
※2 杉並郷土芸能大会:杉並区内の郷土芸能団体が里神楽や祭囃子、獅子舞などを披露するイベント。毎年秋に開催

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>寺社>成宗須賀神社

「第33回杉並郷土芸能大会」に出演の様子

「第33回杉並郷土芸能大会」に出演の様子

成宗囃子保存会 川喜多さんインタビュー

Q:保存会のメンバーと普段の活動
A:活動メンバーは15名、大人10名と小学生5名です。成宗須賀神社の社務所で月2、3回、日曜日に練習を行っています。私自身は地元出身で、子供の頃に囃子を習いました。成人後は就職のため足が遠のいていましたが、数年前より活動を再開し、後進の育成に取り組んでいます。

Q:練習方法や醍醐味
A:最初は太鼓の「てんてけ」とか基本のリズムを覚えることから始めます。鉦(かね)や笛は楽譜だけでは習得することが難しく、師匠について手本を見聞きして覚えます。一人前に近づいてくると、一人ひとりが工夫を凝らすようになり、個性的な笛のメロディを奏でるようになります。お囃子は5人の息がぴったりそろった時がとても心地いいです。

Q:成宗囃子が見られる行事・祭礼
A:毎年8月末に行われる成宗須賀神社の例大祭で、土曜日、日曜日に神楽殿(かぐらでん)でお囃子を奉納しています。神楽殿から境内を見渡しながらの演奏は格別な気分です。

Q:今後について
A:成宗須賀神社の例大祭は、東京高円寺阿波おどりと日程が重なってしまい昔ほどのにぎわいがありませんが、以前のように囃子山車(だし)を出したり、何とか盛り上げたいと思っています。

成宗囃子保存会代表、川喜多さん

成宗囃子保存会代表、川喜多さん

鉦の演奏。撞木(しゅもく)と呼ばれる先端に鹿の角がついた棒で、皿の内側を叩く

鉦の演奏。撞木(しゅもく)と呼ばれる先端に鹿の角がついた棒で、皿の内側を叩く

成宗須賀神社の例大祭での演奏(写真提供:成宗囃子保存会)

成宗須賀神社の例大祭での演奏(写真提供:成宗囃子保存会)

DATA

  • 電話:080-2056-3977(成宗囃子保存会代表)
  • 出典・参考文献:

    「祭りばやしのひびき 杉並の祭礼と郷土芸能」杉並区立郷土博物館
    第33回杉並郷土芸能大会パンフレット

  • 取材:河合裕司
  • 撮影:嘉屋本 暁
    写真提供:成宗囃子保存会
  • 掲載日:2017年12月18日