阿佐ケ谷駅の北側、松山通りにある古書コンコ堂は、2011(平成23)年6月に開業した古書店だ。店主の天野さんは愛知県出身。大学卒業後間もなく上京し、レコード店勤務ののち、「本好きだったことから図書館に勤めた。司書の資格を取り、図書館の仕事にやりがいを感じていたが、給料が安く続けていくことに限界を感じた」と天野さんは言う。その後、西荻窪の住居に近かった「古書音羽館」でアルバイトをしていた時に、店主の広瀬さんから独立を勧められて古書店の開業を決意。音羽館で本格的に働いて資金を貯めながら、古書店運営のノウハウを学んだ。独立にあたっては、開業場所を最終的に中央線沿線に絞り、落ち着いた雰囲気の阿佐谷の今の店に決めたという。
開業時、天野さんは38歳。費用を抑えるために電気工事以外の内装工事は友人の手を借りて自分で手掛けた。本棚やカウンターは木製の温かみや重厚感にこだわり、専門の業者で天野さんのイメージ通りに仕上げたそうだ。
天井が高く明るい店内は、空間や本の並べ方にゆとりがある。入り口脇には天野さんが薦めるセレクト本コーナーが設けられており、お手製のPOPを添えた新刊本も並ぶ。客層は若い世代からシニアまで幅広く、女性客も少なくない。本の仕入れは、店を訪れる客からの買取りがメインとのことだが、「昔から文化人が多く集まるこの地域ならではのラインナップに自然となっている」そうで、文学や音楽、アート関係の品ぞろえが充実している。また最近は、知り合いのアーティストの個展を店内で開催するようになった。
昔から明確な目標を立てず、音楽、本、アートと好きなことにこだわって仕事をしてきたという天野さん。「差別のない世の中を願う」と静かに語る天野さんの思いが、誰でも入りやすいコンコ堂の店づくりにつながっている。