「歯神様を訪れる人も多いですよ」と住職が紹介するのは、境内の如意輪観音(にょいりんかんのん)の石仏のことだ。右手を頬に当て、どのように人々を救い、願いを叶えるか考えている姿が、昔の人々には、まるで歯痛をこらえているようにも見えたのだろう。「自身の歯痛を代わって受けてくださる歯神様」として、今も親しまれている。
また、長仙寺は高円寺四大祭り(※3)の時に場所を提供しており、地元との関わりも深い。ことに東京高円寺阿波おどりでは、1957(昭和32)年、ばか踊りと称した開始当初の練習場所であり、境内に集合した商店街青年部員たちの連が、この場所から出発した。
商店街のにぎわいをよそに、新しい仁王像と、古(いにしえ)より人々の悩みに寄り添う石仏がある境内は、多くの緑とともに静寂に包まれている。門は8時30分から16時30分まで開放され、散策、拝観は自由である。心静かに訪れたい。
宗派 真言宗豊山派(しんごんしゅう ぶざんは)
本尊 不動明王
※1 別当:寺務を統括する長官に相当する僧職
※2 明王山宝仙寺(みょうおうざん ほうせんじ):平安後期の寛治年間(1087~94)源義家によって創建。江戸時代に数多くの末寺を擁した中本寺格の寺院
※3 高円寺四大祭り:「高円寺びっくり大道芸」「東京高円寺阿波おどり」「高円寺フェス」「高円寺演芸まつり」
長仙寺提供資料「長仙寺の沿革」(非売品)
『杉並区史 中巻』(杉並区役所)
『あわおどり 高円寺の十八年』関根敏邦(自費出版)