生田さんデザインのマスコットキャラクター・ブトゥルムの看板が目印
代田橋駅から甲州街道を渡り、歩くこと約7分。静かな通り沿いに2019(平成31)年1月、バターマスターLiving roomはオープンした。
世田谷区のレストランでシェフをしていた生田(いくた)さんとパティシエの濱脇(はまわき)さんが始めたオンライン販売の焼き菓子フィナンシェが好評で、約2カ月で独立を決意。広めのキッチンと倉庫になる物件を探していたところ、カフェ営業も可能な広さの現店舗が見つかったそうだ。「杉並区は都会的過ぎず、人の距離が近くて温かい。皆さん優しいので、のびのび営業できています」と代表の生田さんは語る。
黄色を基調としたウッディな店内にはドライフラワーや洋書、アメリカンコミックのキャラクターグッズなどがあちこちに飾られている。「自分たちがリラックスして働ける空間にしたかったから。きちんとしすぎていると落ち着かなくて」と二人は話す。かわいい動物たちのオリジナルキャラクターのイラストデザイン制作も生田さんが行っており、アパレル中心にグッズを展開したり、フィナンシェのパッケージイラストのオーダーメイドを受けていたり、楽しみながら新しい挑戦もしている。
濱脇さんは、「フィナンシェは通常の洋菓子店だとサブ的な立場で、使用する材料も少なく見た目も地味だが、少しの手間の違いで味が変わっていく深みがあるところが好き」と話す。バターを強めに焦がし濃い茶色の焼き色にして、香りもしっかり立たせている。さっくりとした歯ごたえでありながら、しっとりとした食感が魅力。材料の卵はこだわりの「鳳凰卵」(※)を使うなど、アーモンドパウダー以外はすべて国産品を選び抜いている。
店内でも食べられるが、個包装紙もオリジナルキャラクターのイラストなので贈り物にも最適だ。
カフェの人気メニューは「プリン」(495円)。フィナンシェには卵白だけを使うので、余った卵黄を生かすためにメニューにしたところ、またたく間に話題になった。低温で長時間かけて調理し、形はしっかりと保たれているが舌触りはなめらか。たっぷりのカラメルと生クリームでボリュームも満点だ。
カフェとしてドリンクにも力を入れており、お菓子に合うよう計算されたオリジナルブレンドのコーヒー(550円)もある。コーラやジンジャーエールも自家製で、「やるからには徹底して自分たち好みの店を作り上げたい」という、二人の思いが感じられる。
※鳳凰(ほうおう)卵:相模原の有限会社小川フェニックスが生産