新潟県のほぼ真ん中に位置する小千谷市(おぢやし)。雄大な越後三山や信濃川を望む自然豊かな町で、雪国ならではの美しい雪景色も楽しめる。冬は雪原に熱気球が浮かぶ「おぢや風船一揆」、夏は四尺玉の花火が打ち上げられる「片貝まつり」や市最大の祭り「おぢやまつり」と、四季折々のイベントも盛りだくさん。また、「泳ぐ宝石」といわれる錦鯉(にしきごい)の発祥の地であり、国の重要無形文化財に指定された小千谷縮(※)など、風土に根差した特産品に恵まれている。
東京駅から小千谷駅までは、上越新幹線と上越線を乗り継いで2時間半ほど。車で行く場合、関越自動車道の練馬インターチェンジと小千谷インターチェンジ間は約230キロの距離である。
杉並区との交流
杉並区井草に「小千谷学生寮」があったことから、区と小千谷市との交流が始まり、2004(平成16)年に「災害時相互援助協定」を締結した。今も「小千谷学生寮」では東京都近郊に通学する市民が生活しており、施設を利用した物産展「おぢやフェア」が開催される。また、区役所前でも「小千谷ふるさと市場(物産展)」を行っている。
▼関連情報
杉並区>杉並区の交流自治体>小千谷市(新潟県)(外部リンク)
小千谷市ホームページ(外部リンク)
小千谷観光協会(外部リンク)
片貝まつり(外部リンク)
越後 牛の角突き(外部リンク)
杉並区>交流自治体の実施イベント一覧(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>てくてく×なみすけpart3>気になる!豊かな自然の中での暮らし「小千谷市」取材日記
地元の方々に愛されている場所へ足を運んでみた。小千谷市の魅力が実感できるだろう。
古民家民宿「おっこの木」
市の南部にある山あいの小集落・若栃(わかとち)村に、古民家民宿「おっこの木」がある。施設を運営する「Mt.ファームわかとち」の代表・細金剛さんは、「2004(平成16)年10月の新潟県中越大震災で元気をなくした集落に活力を取り戻そうと、30人が集まり、“わかとち未来会議”を発足しました。そして、2010(平成22)年6月に、地域おこしの一環として“おっこの木”を開業しました」と話す。客室は2部屋あり、10名ほどが宿泊可能だ。村の活動を手伝う「地域おこし協力隊」の松澤和輝さんは、「ここでの暮らしは沢からの風が気持ちよく、四季がはっきりと感じられる」と言う。現在は民宿運営のほか、学校などの教育機関や海外からの利用者を受け入れるグリーンツーリズム事業や、地元の山菜を利用した特産品の加工や販売にも力を入れる。全国から視察に来る人も多く、村の活性化に一役買っているようだ。
市民の家・小千谷信濃川水力発電館「おぢゃ~る」
「おぢゃ~る」は、信濃川に水力発電所をもつJR東日本と小千谷市が共同で建設した宿泊所併設の複合施設。2016(平成28)年7月にリニューアルした。季節に合ったイベントや親子ワークショップも開催され、市民の交流や学習、憩いの場として親しまれている。最大90名の宿泊が可能で、広場ではキャンプやバーベキューが楽しめる。また、1階の「小千谷信濃川水力発電館」では、信濃川の水力発電の体験型ジオラマや電車運転シミュレーターがあり楽しく学べる。
小千谷市は、東京圏からの移住を支援している。市で移住生活を始めた方や、長期滞在できる施設の利用者を訪ねて話を伺った。
杉並から移住し、「市民と市政をつなぐ」活動を続ける
かつて杉並で、自由に地方と関われるライフスタイルを構築する団体「わぐわぐWorks」で活動していた髙木さん。小千谷市を知ったきっかけは、訪問する地方を探していたときに市の職員と知り合ったことだという。「当初は地元の方との関係づくりのため、用事がなくても小千谷に来ていました」と笑いながら振り返る。その後、小千谷市から「市民と市政をつなぐ」団体を作りたいという話を受け、「興味があったので移住してきました」と話す。現在は「地域づくり支援団体 こしゃる」の事務局長として、イベントを開催したり、SNSを活用した地域情報発信事業に取り組んだり、地域の人々と協力しながら市の活性化に努めている。
自給自足生活を体験できる施設
「おぢやクラインガルテンふれあいの里滞在型農園」は、全国に約70カ所あるクラインガルテン(滞在型市民農園)の一つで、長期滞在しながら田舎暮らしができる施設だ。利用者は「ラウベ」と呼ばれる約40㎡の宿泊施設に暮らし、200㎡の農園で自給自足生活を体験できる。近くの山や川で登山や渓流釣りをしたり、収穫祭などのイベントや文化財の遺跡調査などに参加したりすることも可能だ。利用者からは「棚田の美しさに魅せられて、引退後にここで生活を始めました」、「早期退職後、クラインガルテンの制度を知り、この土地の雰囲気が気に入りすぐ移住を決めました」という熱意あふれる声が聞かれた。募集は年1回、9月下旬~10月頃に行われる。随時見学も可能なので(申込制)、興味のある方は訪ねてみてはいかがだろうか。
▼関連情報
地域づくり支援団体「こしゃる」(外部リンク)
小千谷市>おぢやクラインガルテンふれあいの里滞在型農園(外部リンク)
SNS映えする「おぢや風船一揆」をはじめ、市のイベントは外国人の人気も高まっている。「小千谷国際交流の会(OIS)」は、市を訪れた外国人のサポートのほか、市内の学生の短期留学支援、外国人・留学生のための生活支援、交流イベント「フレンドシップパーティー」の開催など、市民と外国人のための活動をしている。会長の山岸拓詩さんは、「小千谷に来てくれる外国の方々は、豪雪地帯に住んだ経験のない人が多い。雪の多い場所特有の観光や物産など、小千谷の魅力を知ってもらいたい。また、私たちも海外の友人をたくさん作りたい」と語る。
前会長の鈴木進五さんは、かつて井草の「小千谷学生寮」に住んでいた。「1955(昭和30)年頃、当時の小千谷市長が、経済的に厳しい生徒のため都内に学生寮の設置を考えていたところ、趣旨に賛同した杉並の地主さんが、格安で敷地を提供してくれたそうです」と話す。鈴木さんは会長を退いた後、所属している「小千谷・海外留学生支援協議会」の事務局メンバーとして、ゲストハウスの運営に力を入れている。
緑豊かな小千谷市内を巡っていると、あちこちに錦鯉の養殖池や、錦鯉を模した建物やお土産を見掛ける。1989(平成元)年にオープンした「錦鯉の里」では、錦鯉の歴史を学べるほか、日本庭園や観賞棟の池で優雅に泳ぐコイを見たり、餌やりができる。
また、小千谷市は昔から織物が盛んである。「小千谷織物同業協同組合」が運営する、小千谷織物工房「織之座」の体験工房では、小学生から大人まではた織り体験を楽しめる。ギャラリーには小千谷縮の技法の説明パネルや道具が展示されている。
小千谷市の食
小千谷市は、ナスやカリフラワー、サトイモなど、特産の野菜も多い。コシヒカリの産地として有名な「魚沼産」のブランド名を使用できる限られた地区の一つだけあって、米のうまさも格別だ。
「へぎそば」も、ぜひ食べて欲しい名物料理。布海苔(ふのり)という海藻をつなぎに使った喉越しの良い蕎麦で、「へぎ」と呼ばれる大きな四角い器に盛りつけられている。
取材を終えて
取材をした方々からは、新潟県中越大震災で被害にあった時の苦労話や、「杉並区が迅速に救援トラックを送ってくれて心強く感じた」という支援への感謝の声が聞かれた。そして、震災から復興した経験を生かし、より良い町づくりをしていきたいという思いが強く感じられた。小千谷市はのどかで、雪国ならではの見所が多い場所。ゆっくりと自然を楽しみたい方にお勧めである。
▼関連情報
小千谷織物同業協同組合>小千谷織物工房「織之座」(外部リンク)
錦鯉の里(外部リンク)
わたや(外部リンク)
※小千谷縮(おぢやちぢみ):1661年頃に堀次郎将俊が考案し広めたとされる、独特なしわ(しぼ)が特徴の麻織物。しぼにより、サラリとした着心地になる