青梅市

晩秋の御岳橋

晩秋の御岳橋

日帰り旅行にぴったりな川と森の観光地

町の6割以上を占める豊かな森林と清流の町、東京都青梅市。人口は約13万人、2021(令和3)年に市制施行70周年を迎えた。杉並区内から車や電車で1時間ほどで行ける、日帰り旅行にぴったりな観光地だ。例年2月に開催される青梅マラソンや、市最大規模の祭りである5月の青梅大祭の頃は、ひときわ多くの観光客でにぎわう。
市内を流れる多摩川の景観は圧巻だ。上流にある御岳渓谷(みたけけいこく)は日本の名水百選に選定された景勝地。川沿いの遊歩道から、巨石の間を縫うようにゆったり流れる様子を観賞できるほか、カヌーやロッククライミングなどのスポーツにも挑戦可能。また、文化人ゆかりの美術館や歴史ある寺社など見どころが多く、目的や好みに応じた観光マップも多数用意されている。

青梅街道が結んだ絆
青梅市と杉並区は古くから青梅街道でつながっており、江戸時代にはこの道を通って青梅産の石灰が江戸の町に運ばれていた。また、1949(昭和24)年から1984(昭和59)年まで青梅-荻窪間に都営バスが運行していた。このような歴史を踏まえ、2009(平成21)年に「杉並区及び青梅市の交流に関する協定」、2011(平成23)年に「杉並区及び青梅市の災害時相互援助に関する協定」を締結。杉並区役所での青梅市観光展や写真展の開催、「すぎなみフェスタ」への青梅市の事業者による出店、青梅の森を守るボランティア活動への区民の参加などを通し、交流を深めている。また、杉並区内在住者は、青梅市内の宿泊施設や美術館などを利用する際に料金が割引になる特典もある。

▼関連情報
杉並区>杉並の交流自治体>青梅市(外部リンク)
東京都青梅市公式ホームページ(外部リンク)
杉並区公式ホームページ>青梅市の宿泊施設・美術館等割引サービス(外部リンク)
おうめ観光ガイド>御岳渓谷遊歩道(外部リンク)
おうめ観光ガイド>寒山寺(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>てくてく×なみすけPart3>豊かな緑と水に恵まれた「青梅市」取材日記

御岳渓谷遊歩道から望む、玉堂美術館と大イチョウ

御岳渓谷遊歩道から望む、玉堂美術館と大イチョウ

アウトドアスポーツが盛ん。例年春秋には、ラフティングなどの競技大会「御岳カップ」が開催される

アウトドアスポーツが盛ん。例年春秋には、ラフティングなどの競技大会「御岳カップ」が開催される

歴史ある寺社が多数ある。写真は寒山寺

歴史ある寺社が多数ある。写真は寒山寺

2021(令和3)年、区役所2階区民ギャラリーで開催でされた「青梅写真展」

2021(令和3)年、区役所2階区民ギャラリーで開催でされた「青梅写真展」

生き生きとした森林を未来に残す

青梅市では健全な森を守り整備する新たな担い手の育成を目的として、2002(平成14)年に「森林ボランティア育成講座」を開講した。区では交流に関する協定を締結した翌年にすぎなみ地域大学の講座の一つとして講座の募集を始め、以降「森林ボランティア育成講座」は杉並区と青梅市の共催講座となっている。講座の受講生は「青梅の森」等の森林の整備に貢献し、講座修了後もボランティア団体への所属などを通し活動を続けている。青梅市役所職員の山田さんは「子供たちの森林環境教育が進む中、親世代にも森林を守る意識を普及していくことが課題です。この講座がきっかけの一つになれば」と期待を込める。
青梅市では、伐採した木を校舎の内装などに利用することや、森林での体験授業にも力を入れている。青梅市役所職員の川田さんは「市内や他の地域から小学生が授業で森に来てくれています。これからも、たくさんの子供たちに森へ来てほしい」と話す。貴重な自然を守りながら未来につなげる森づくりに、森林ボランティアは欠かせない存在になっている。

▼関連情報
青梅の森(外部リンク)
森林ボランティア 森守会(外部リンク)

真剣な表情で作業の説明を受ける受講生

真剣な表情で作業の説明を受ける受講生

「青梅の森」での間伐作業

「青梅の森」での間伐作業

愛され続ける菓子「青梅せんべい」

青梅せんべいは、江戸時代末期、青梅街道の宿場町として栄えた青梅の地名にちなんで作られた100年以上の伝統を誇る銘菓である。青梅市郷土博物館には青梅の名所を図柄にした古い焼き型が保存されている。
すぎなみフェスタや区役所での観光展などにも出店している「有限会社柳丸」の西分本店を訪ねた。創業1945(昭和20)年、「青梅せんべい」をはじめ、どら焼き、焼き団子など、さまざまな菓子を製造販売する老舗である。柳丸の「青梅せんべい」は梅2輪を重ねたデザインが特徴で、販売当初から変わらない甘く香ばしい味を守り続けている。写真や文字をプリントした「プリントせんべい」や、梅やみそを加えたものなど種類も豊富。また、地元の閉店した菓子店を惜しみ、引き継いだレシピで作る「オーメ・ノーブル」なども好評とのこと。加藤社長は「杉並区とは長いお付き合いになりますが、出店を楽しみにしてくださる方がたくさんおり、うれしく思います。今後も販売を通して出会う方々からヒントをいただきながら、喜ばれる商品を作ってまいります。お菓子を通して、もっと青梅のことを知っていただきたいと考えています」と語る。

▼関連情報
柳丸(外部リンク)

工場を併設する西分本店。JR青梅駅から徒歩約9分、歴史ある身近な店として地元の方や観光客に人気

工場を併設する西分本店。JR青梅駅から徒歩約9分、歴史ある身近な店として地元の方や観光客に人気

イベント用に作られた「プリントせんべい」と、閉店した菓子店から引き継いだ「オーメ・ノーブル」など

イベント用に作られた「プリントせんべい」と、閉店した菓子店から引き継いだ「オーメ・ノーブル」など

新たな梅の里づくり

市の名前にもなっている梅は青梅市の名物の一つだ。1969(昭和44)年に吉野梅林を整備して開設された「青梅市梅の公園」は、関東屈指の梅の名所であった。だが、2009(平成21)年に「青梅市梅の公園」の1,200本を超える全ての梅のほか、観光・商業用の多くの梅や名木がウメ輪紋(りんもん)ウイルスに感染し、伐採することになった。2013(平成25)年、梅の名所を復活させるため、市民や事業者、行政などが一丸となって「青梅市梅の里再生計画」を策定。区でも援農ボランティアを募集し梅の再生などに協力した。
2017(平成29)年、梅の見頃に開催される「観梅市民まつり」が再開。翌年の「まつり」では、区から東京高円寺阿波おどりの連が参加し花を添えた。
2021(令和3)年には青梅市全域で梅の植樹が可能となった。「青梅市梅の公園」に最初に再植樹された6本の梅は、再生・復興のシンボルとして三諸(みもろ)、初花(はつはな)など雅な名前が付けられている。梅はまだ幼木ばかりだが、水仙なども植えられており、早春の香りが楽しめる。

▼関連情報
おうめ観光ガイド>青梅市梅の公園(外部リンク)

青梅市の名前の由来といわれる金剛寺にある「将門誓いの梅」

青梅市の名前の由来といわれる金剛寺にある「将門誓いの梅」

梅の里復興を願い、幼木の成長を見守る人でにぎわう「観梅市民まつり」(写真提供:青梅市)

梅の里復興を願い、幼木の成長を見守る人でにぎわう「観梅市民まつり」(写真提供:青梅市)

東京高円寺阿波おどりの連も「まつり」に参加(写真提供:青梅市)

東京高円寺阿波おどりの連も「まつり」に参加(写真提供:青梅市)

自分好みのプランで観光を楽しむ

川のせせらぎとともに四季折々の風景を楽しめる「御岳渓谷遊歩道」は、多摩川の両岸約4㎞にわたって整備された名勝。多摩産材を床に使ったつり橋「楓橋」(かえでばし)から、渓谷を一望できる。橋のたもとには、軽食や土産を販売する「清流ガーデン 澤乃井園」が、対岸には「寒山寺」がたたずむ。
JR御嶽駅から徒歩約5分の「玉堂美術館」は、この地を愛した日本画家・川合玉堂を記念して建てられた。15歳頃の写生から84歳の作品まで、玉堂が生涯を通じて描いた約300点を収蔵している。他にも、「櫛かんざし美術館」、「青梅市吉川英治記念館」、旧青梅街道沿いに残る昭和レトロな建物や看板など、市内にはさまざまな観光スポットがある。
土産を買うならJR青梅駅から徒歩約1分の「まちの駅青梅」が便利だ。地元の特産品のほか、「まちの駅青梅」限定ラベルの日本酒や、香りの良さで定評があるゆずを使った菓子など、市内の生産者・企業と企画した独自の商品も並ぶ。地鶏や新鮮な野菜もあり、市民にも人気の店だ。

取材を終えて
今回は主に渓谷沿いを取材したが、ここで紹介した以外にも御岳山、塩船観音寺、青梅鉄道公園など観光スポットが多い。プランを決める際には、市の公式ホームページや、小冊子「青梅市ウォーキングマップ 2021年版」(坂道まで表示あり)などが参考になるだろう。取材で出会った方々からは、町や自然を大切に守りながら新しい魅力も作っていきたいという思いが伝わってきた。

▼関連情報
澤乃井園(外部リンク)
玉堂美術館(外部リンク)
まちの駅青梅(外部リンク)

「寒山寺」の鐘楼(しょうろう)。格天井(ごうてんじょう)の花の絵は玉堂の弟子たちによる

「寒山寺」の鐘楼(しょうろう)。格天井(ごうてんじょう)の花の絵は玉堂の弟子たちによる

「玉堂美術館」。美しい石庭の奥に、玉堂のアトリエ(再現)がある

「玉堂美術館」。美しい石庭の奥に、玉堂のアトリエ(再現)がある

旧青梅街道沿いで見られる、レトロな町に調和する電話ボックスと猫のアート作品

旧青梅街道沿いで見られる、レトロな町に調和する電話ボックスと猫のアート作品

左手前:皮が柔らかく甘い「トーキョー トメート」。左奥:沢井ゆずを使ったパウンドケーキ「ゆずほ」。右:柳丸が焼いた「まちの駅青梅」5周年記念の「おうめバウム」

左手前:皮が柔らかく甘い「トーキョー トメート」。左奥:沢井ゆずを使ったパウンドケーキ「ゆずほ」。右:柳丸が焼いた「まちの駅青梅」5周年記念の「おうめバウム」

DATA

  • 出典・参考文献:

    「青梅市史」青梅市史編さん委員会(東京都青梅市)
    『みる・よむ・あるく 東京の歴史9 地帯編6 多摩Ⅰ』(吉川弘文館)
    「広報おうめ」(令和3年9月15日号)
    「青梅市ウォーキングマップ2021年版」(青梅市)
    農林水産省HP>ウメ輪紋ウイルス https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/ppv/ppv.html

  • 取材:あんとるめ
  • 撮影:あんとるめ、NPO法人TFF
    写真提供:青梅市
    取材日:2021年11月13日
  • 掲載日:2022年01月24日