ベリーズティールームは金曜・土曜・日曜日の12時から17時だけ開く本格紅茶と英国菓子の専門店。2018(平成30)年、浜田山駅北口からすぐの浜田山メインロード商店街に移転オープンした。目印は洋館風のピンク色の扉。2階に上がり、ステンドグラスがはめ込まれた扉を開けると、ピンク色のカウンターと何種類もの紅茶や英国菓子が目に飛び込む。イートインスペースは、花柄の壁紙にアンティーク家具をしつらえた落ち着いた空間だ。奥のキッチンから漂う香ばしい匂いに魅せられていると、「ちょうどクランペットを焼いているところです。クランペットは、英国で親しまれているパンとパンケーキの中間のようなお菓子で、もちもち食感が特徴です」とオーナーの和田真弓さん。クランペットは、甘みがないので食事としても楽しめる。
和田さんは、元々大手不動産販売会社に勤めていた。2年目の夏に何か習い事を、と通い始めたのが紅茶教室。そこで味わった紅茶のおいしさに感動したのが開業のきっかけになった。「大好きな紅茶の店を20代のうちに開く」ことを目標に据え、会社勤めの傍ら、製菓学校や起業セミナーに通って猛勉強。30歳目前の2013(平成25)年1月に、浜田山駅の南側にティールームをオープンし、見事目標を達成した。
しかし1年で廃業危機に陥った。そんな時、学校時代の先生や友人が「菓子の充実」や「他にはないメニュー」が鍵であると助言。いくつかの候補の中から試作を重ね、たどり着いたのが英国では一般的だが日本では珍しいクランペットだった。メニューに入れるとSNSに投稿されるようになり、客足も増加。廃業寸前だった店は盛り返した。
オープンから2年、店が軌道に乗ってくると、日本橋三越本店から「三越英国展」への出店依頼が来た。出品したクランペットの評判がイベント全体への高評価にもつながったと主催者に認められ、以降の「英国展」に毎回出店することとなった。
これを機に全国から客が来店し、オンライン注文も増えて、キッチンが手狭になったので、店舗、スタッフ数などの規模を拡大するため、移転することにした。「なじみのお客様を大切にしたいので、次も浜田山と決めていました」。
再スタートを果たしたものの、コロナ禍でやむなく3カ月の休業を強いられた。そこでオンラインショップに注力し、さまざまな英国菓子を詰め合わせた「おうちティータイム応援セット」を販売したところ、SNSで話題沸騰。注文に追いつけない状態になったので、店舗営業を再開するにあたり、営業時間を金曜日と週末の12~17時の限定とした。
クランペット、スコーンなどの英国菓子の他、イートインの食事セットも充実している。「コテージパイセット」(1,500円)は、炒めたひき肉の上にパイ生地代わりのマッシュポテトとチーズを乗せ、オーブンで焼きあげた英国の代表的な家庭料理。セットメニューには紅茶のポットサービスが付き、数十種類の中から好きな紅茶を選べる。1番人気は、ティーメニューの冒頭を飾るオリジナルブレンドティー「浜田山」。スリランカ産の3種の茶葉をブレンドし、毎日飲んでも飽きのこない味に仕上げている。茶葉も販売しており、自宅用や贈答用も好評である。その他2カ月ごとにテーマを変えて提供しているアフタヌーンティーも見逃せない。2023(令和5)年5・6月は、5月6日に行われたイギリスのチャールズ国王の戴冠式にちなみ考案、7・8月は「アリスのアフタヌーンティー」(4,400円)を提供し、客を引きつける工夫を重ねている。
『ベリーズティールームの本格紅茶と英国菓子レシピ』小関由美・和田真弓(誠文堂新光社)