家族や友人が内装デザインに協力してくれたというシンプルで明るい店内
住宅街を歩いていると、ぽつんと現れる小さくて白い店。ピカピカに磨かれた窓からは、ベーグルや食パン、焼き菓子が行儀よく並ぶ店内の様子がうかがえる。2022(令和4)年10月に開店したSLOW(スロー)は、人通りが控えめな阿佐谷南の住宅街にありながら、ひそかに人気を集めているベーカリーだ。
店主は会社員の頃から大のパン好きだった。初めての訪問先では必ずといってよいほどベーカリーを探して立ち寄る、そんな生活をしていたという。会社勤めを辞めて新しい挑戦を考えた時、ベーカリーの開業に思い至ったのはごく自然だったのかもしれない。
荻窪に数年居住した経験もあり、「コロナ禍の間に店舗を探していたのですが、阿佐谷は安心感というか親近感があって、駅からも徒歩約4分と近いし、住宅街ですが小さな店もぽつぽつあって寂しい感じはなかったのでここに決めました」と話す。パン屋で修業した経験はなく、ほぼ独学。「ドライイーストを使わずに、今は酵母を一から自分で起こし、厳選した国内産の小麦粉でパンを作っています」
うっかりすると通り過ぎてしまうような外観だが、店内には数人なら十分入店可能。「どんな商品があるのか見るだけでもいいですよ」とのことなので、一度気軽に立ち寄ってみてほしい。
「なんといってもベーグルで、種類も豊富な方だと思います。"ベーグルは好きじゃなかったけど、ここのはおいしい"と言っていただいています。メニューの中には、お客様からご要望を頂戴し、実際に販売に至った商品もあるんです」
ベーグル独特の調理方法である発酵後のゆで時間は、一般的な目安よりも短めにしているそうだ。もっちりした歯応えが感じられて満足感が高く、菓子パンよりも腹持ちが良い。ドライナッツやフルーツ入りのもの、ペッパーなどの辛みを生かしたものなど多彩なメニューで、食材のコンビネーションも個性的。夕方近くには「ワインのお供には、どれがいいかしら?悩んじゃうわ」としばらく考え込む客の姿も見られる。価格は220円から300円と手頃だ。