店主の門脇さんが「マルナ」を開店したのは2015(平成27)年。それ以前は川崎で20年間居酒屋を営んでいた。しかし夜だけでなく昼も集客できるよう、昼にうどんを提供する居酒屋に挑戦することにした。一念発起し製麺学校に通い、うどん作りの技術を磨き、自宅に近い浜田山での新店オープンにこぎつけた。
開店後、リーズナブルでおいしいうどんが評判になり、昼ににぎわう店となったが、夜も楽しめる店にするため、数多くの居酒屋的なメニューを開発。現在では昼も夜も幅広い品ぞろえを誇る店となっている。
メニュー開発のポイントを門脇さんに伺うと「基本的に、自分が食べたいものを提供したいと思っています。それは、体に良くて、ボリュームがあって、安くておいしい料理です」と目を輝かせた。
門脇さんの「体に良い料理」へのこだわりは、店名からも伝わってくる。「マルナ」の「ナ」は、野菜の「菜」。野菜をたっぷり使った料理で健康になってほしい、という思いが込められている。炭水化物に偏りがちなうどんが看板商品だったからこそ、盛りだくさんの野菜を使うことを心掛けてきた。
杉並区が「野菜たっぷり」のヘルシーメニューとして認定した「長崎名物たっぷり野菜の皿うどん」には野菜を約280g使用しており、認定に必要な基準量140gをはるかに超えている。ヘルシーなのに食べ応えがある人気メニューだ。
「もずくサラダ」も門脇さんのおすすめ。沖縄産のもずくが、モグモグほおばれるほどぜいたくに盛りつけられた一皿だ。「これがめちゃくちゃ体にいいんですよ。特に女性に大人気です」と胸を張る。
うどんに限らず、昼も夜もメニュー全般に、食べる人の健康を気遣う門脇さんの思いが反映されている。
店の広さや造りにも魅力と工夫があふれている。入り口は段差がないので車椅子でも入りやすい。入店すると奥行きの深さに驚くほどで、席の間隔もゆったりとしている。壁には、選ぶのに迷うほどにぎやかにメニューが張り巡らされており、見ているだけで楽しくなる。
2~4人掛けのテーブル席や、半個室のように使えるグループ席のほか、カウンター席もあるので一人でも利用しやすい。ベビーチェアが準備されており、小さな子供連れの家族からも親しまれている。近隣のグラウンドでスポーツをした後の団体や、マンション建設現場の作業員などの来店も多い。老若男女を問わず幅広く受け入れ、生活の「隣」で見守ってくれているようなアットホームさがうれしい。「浜田山の人は落ち着いていて、やさしいんですよ」とほほ笑む門脇さんのまなざしが温かかった。