高井戸囃子・寿獅子 

皇居前広場で演じられた囃子

上高井戸第六天神社の氏子地域で継承されている高井戸囃子(たかいどばやし)。祭の始まりを告げたり、神輿(みこし)を先導したりする威勢のいい響きと、笛ののびやかな高音や太鼓の音色が心地よい。
高井戸囃子は、江戸の末期か明治の初め頃に下高井戸浜田山八幡神社の宮司・齋藤近太夫が教えたものと伝えられ、早間船橋流(※1)が源流と考えられている。『祭りばやしのひびき 杉並の祭礼と郷土芸能』によると、「1890(明治23)年の大日本帝国憲法発布記念行事として、皇居前広場で囃子を演じた」とある。
1974(昭和49)年に高井戸囃子保存会が組織され、囃子とともに、獅子舞、面踊り(※2)を継承している。1982(昭和57)年、杉並区無形民俗文化財に登録された。

寿獅子
寿獅子は、獅子頭を腕と頭と水平に持って動物の首に見せ、一人で舞う獅子舞。高井戸囃子保存会では、上高井戸第六天神社の例大祭などの地域の行事やお祝い事のときに、囃子に合わせて演じている。2017(平成29)年の「第33回杉並郷土芸能大会」(※3)では、登場した獅子が、激しく舞った後、眠りこけてしまい、その後、高鳴る囃子の音に目覚めるという演技が見せ場だった。また、獅子舞に合わせて「ひょっとこ」と「おかめ」の面踊りも登場し、にぎやかに楽しませていた。

※1 早間船橋流:千歳村船橋(現世田谷区船橋)の内海軍治朗が確立した、テンポの速い囃子
※2 面踊り:ひょっとこ、おかめ、天狐(てんこ、狐が霊力を得た神獣)などの面を付けた踊り
※3 杉並郷土芸能大会:杉並区内の郷土芸能団体が里神楽や祭囃子、獅子舞などを披露するイベント。毎年秋に開催

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>寺社>上高井戸第六天神社
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>寺社>下高井戸浜田山八幡神社

「寿獅子」。演じ終わると汗だくになるそうだ

「寿獅子」。演じ終わると汗だくになるそうだ

威勢の良さのなかに、温かみのある囃子の音が広がる

威勢の良さのなかに、温かみのある囃子の音が広がる

ひょっとこ面とおかめ面で熱演する子供たち

ひょっとこ面とおかめ面で熱演する子供たち

高井戸囃子保存会 内藤さんインタビュー

Q:高井戸囃子保存会のメンバーと普段の活動
A:現在の会員数は小学生から大人まで10数名です。練習は週1回、私の自宅で行っています。若い会員を育てることを第一に、囃子に加えて獅子舞、もどき(※5)なども併せて練習に励んでいます。また、地域の小学校で子供たちに指導も行っています。

Q:高井戸囃子が見られる行事・祭礼
A:9月上旬に行われる地元の上高井戸第六天神社の例大祭を中心に、9月の大宮八幡宮の例大祭、5月と10月の高井戸地域区民センターまつり、2月の浴風園節分行事などでご覧になれます。その他にも、地域の学校での周年行事、結婚式などのお祝い事に招かれる機会も多くなっています。

Q:今後について
A:高井戸囃子を継承していくために、もっと多くの子供たちに囃子を知ってほしいし、新しい演目も加えていきたいと思っています。いろいろなところで高井戸囃子をご覧になってファンになってほしいと思います。

※5 もどき:芸能で、主役のまねをしたり、からかったりする道化役など

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>寺社>大宮八幡宮

高井戸囃子保存会会長、内藤さん

高井戸囃子保存会会長、内藤さん

囃子に合わせて天狐の面が登場

囃子に合わせて天狐の面が登場

DATA

  • 出典・参考文献:

    「祭りばやしのひびき 杉並の祭礼と郷土芸能」杉並区立郷土博物館
    第33回杉並郷土芸能大会パンフレット
    日本大百科全書(ニッポニカ) 小学館

  • 取材:元川 正文
  • 撮影:嘉屋本 暁、元川 正文
  • 掲載日:2017年12月18日