2005(平成17)年9月4日、台風14号の影響で区内が大きな水害に見舞われた。約2週間後に発行された広報すぎなみ「9月4日の集中豪雨特集号」によると、床上浸水が1,107件、床下浸水が646件、土間上浸水が413件あり、戦後2番目の被害だったと報告されている(平成17年9月12日時点)。また、2018(平成30)年には、8月13日のゲリラ豪雨により京王井の頭線久我山駅前が冠水、27日にもゲリラ豪雨でJR阿佐ケ谷駅前の幹線道路がわずかの時間で冠水するなど、近年も不安を感じる事態がたびたび起こっている。
区内の水害に対するリスクと避難に関する情報は、2019(平成31)年4月に発行された「わが家の水害ハザードマップ」に集約されている。
防災課担当者は、「これまでも水害ハザードマップは発行されましたが、今回発行されたマップでは、都市型水害対策連絡会(※)が想定した新しい基準でのシミュレーションを反映しています。改訂前は、予想される時間最大雨量は114ミリメートルとしていましたが、最近の降雨状況により153ミリメートルに変更しました。その結果、浸水が危ぶまれる範囲が以前よりも広がっています」と話す。マップ上には、河川が氾濫した場合の浸水予想区域のほか、1981(昭和56)年~2017(平成29)年に浸水があった箇所も表示されおり、予想される浸水深が色分けされている。「以前のマップでは20センチ以上浸水すると予想される場所に色を付けて警告していましたが、最新版では10センチの浸水が予想される地域にも色を付けています」と防災課担当者はいう。浸水深を見ると、ほとんどの地域で3メートル以内に収まっている。「区内の想定浸水では、建物の2階以上に浸水するところはほとんどありません。避難所に行かなくても、上層階に避難するだけで人命は守れます。ですが、地図中に色の表示がない地域でも、半地下に駐車場などがある場合は、車を早めに安全な場所へ移動させるなどの対策が必要です」
※都市型水害対策連絡会:東京都と各川の流域の区市等により構成された連絡会で、浸水予想区域図の作成、公表をしている
「わが家の水害ハザードマップ」で特に活用したいのは「私の行動計画」欄だ。「どこに避難する?」「持ち出すものは?」「気にかける人、家族の居るところは?」「避難行動開始はどんな合図から?」の4項目について、自由に記入できる。あらかじめ行動計画をしっかりとまとめておけば、万が一の時も冷静に行動できるだろう。
また、「入手したい情報」欄には、災害の情報収集に役立つホームページのURLや二次元コードが掲載されている。テレビやラジオの気象情報、区の公式ホームページやSNS、区民が持ち出せる土のう置き場、災害・防災情報メール配信サービスなど、知っておくと安心な情報サイトが載っているので、事前に確認しておくことをおすすめしたい。
2008(平成20)年3月、環状七号線の地下にある「神田川・環状七号線地下調節池」が本格稼働し、善福寺川流域の水害の軽減に大きな効果をもたらした。このような水害対策のための下水道浸水対策整備工事や調整池の建設などハード面の整備は、東京都や杉並区によって現在も進められている。
台風やゲリラ豪雨などによる自然災害は、いつ発生してもおかしくない。平常時にできる準備をして備えることが、安全への第一歩といえよう。