田中青坪 永遠のモダンボーイ

編著・監修:アーツ前橋(水声社)

1903(明治36)年に群馬県前橋市で誕生した田中青坪(たなか せいひょう 以下、青坪)は、日本美術院を中心に活躍した日本画家だ。幼少期に一家で上京後、中学生の頃にドイツの芸術家・アルブレヒト・デューラーの画集や、独特のタッチで日本画壇をリードした岸田劉生の作品に衝撃を受け、元来絵が好きだったこともあり、画家を目指すようになる。その後、小茂田青樹に師事し日本画家として活躍。たおやかな筆運びがうかがえる優しげな人物画、際立った稜線を取り入れた一見洋画とも感じられる斬新な風景画など、青坪ならではのモダニズムを表現した数多くの秀作を世に送り出した。
結婚を機に1929(昭和4)年より杉並区に転入し、1994(平成6)年に90歳で没するまで、画家人生の大部分を荻窪で過ごした。生存中には個展を開催しておらず、もっぱら創作、研究、東京美術学校(現東京藝術大学)での後進の指導等にあたった。そのせいか青坪に関する書籍は皆無といってもよい。本書は郷里である群馬県の美術館「アーツ前橋」で開催された展覧会「田中青坪 永遠のモダンボーイ」を記念して発行された唯一の図録であり、人物評伝ともいえる貴重な1冊だ。

おすすめポイント

冒頭の遺族の寄稿文には、時同じくして荻窪に邸宅を構えていた近衞家との深い親交が紹介されている。また、西永福の自宅を拠点に活動していた日本画家の奥村土牛はじめ、当時の文化人との交流が記されており、大正から昭和中期にかけて杉並で芽生えた文化の勢いが感じられる。

▼関連情報
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DATA

  • 取材:高円寺かよ子
  • 掲載日:2021年06月21日