「久我山ホタル祭りへ遊びに来たよ~。浴衣や甚平を着た子供たちも来てるよ。お祭り気分を盛り上げてくれるね~」
2022(令和4)年6月4日・5日、新型コロナによる中止が続いていた第25回久我山ホタル祭りが、3年ぶりに開催された。日暮れから、神田川と玉川上水の放流場所、区立宮下橋公園、久我山稲荷神社で光るホタルが見られるだけではなく、昼過ぎから区立久我山会館でもネットケージに入ったホタル観賞ができる。また、商店街の露店、ミニライブ、大道芸人のパフォーマンスなどもあり、杉並区以外からも大勢の人が訪れる人気のイベントだ。
久我山ホタル祭り実行委員長・弓削田(ゆげた)さんが「なみすけ、ホタル祭りにようこそ。このお祭りは、ホタルを通じて、自然豊かな久我山の良さと自然を大切にする心を今の子供たちにも知ってもらいたいという、地元の人たちの思いが詰まった祭りなんですよ」と教えてくれた。
「夜空に光るホタル、たくさん見られるかな~」
今年の久我山会館ホールのホタル観賞は「おひさしぶり ホタルさん」というタイトルがつけられ、開始前から長い行列ができていた。
「みんなも光るホタルを早く見たいんだね~」
区長、区議会議員、弓削田さんのテープカットで、いよいよ観賞スタート。20匹ずつホタルを入れたケージが6つ置いてある暗いホールに、ワクワクしながら入って行くと、
「うぁ、真っ暗で何も見えない~!でも、目が慣れたらだんだん見えてきたよ。ケージの中でホタルが黄色く光って飛んでいるよ!」
訪れた人たちも、かすかに輝くホタルを見つけては声を上げていた。今年から観賞会場がバリアフリーになり、多くのベビーカーや車いすの利用者も参加できるようになった。
「ちょっぴりお腹もすいてきたから、お休み処へ行ってみよう!」
神田川沿いの区立久我山中央緑地に、休憩用のテーブルといすが置かれ、周囲にぐるりと地元の飲食店や商店会の模擬店が並んでいた。
「ソーセージ、おでん、綿あめ…、どれもおいしそうで、迷っちゃうなぁ~」
多くの模擬店の中で目を引いたのは、「PAPA(パパ)」の文字が入ったおそろいの黒いシャツを着たスタッフたち。「久我山幼稚園に通っている園児と卒園児の父親が、有志で例年模擬店を開いているんですよ」と、明るい文化祭のような盛り上がりを見せていた。また、地元で有名なイタリアンレストラン「トラットリア・エ・ピッツェリア・コニファー」が模擬店で焼きそばを出しているのも、祭りならではの光景だ。
一休みしたなみすけが次に向かったのは久我山稲荷神社。境内に多くの人が続々と集まってきている。お目当ては、「パんらん」さんのパントマイム(風船パフォーマンス)だ。
「オルガンの音に合わせて、ピエロがやってきたよ」
ピエロのパントマイムに興味津々の子供たち。パフォーマンスだけではなく、クイズやバルーンアートでも大盛り上がり。
「昔ながらの芸に、お父さん、お母さんもほっこりした気分になれたみたい」
この神社には、日暮れからホタルが観賞できるようテントの中に3つのネットケージが吊り下げられていた。
「そろそろミニライブが始まる時間かな?」
すてきな歌声を聞こうと再び久我山会館へ。シンガーソングライターのサスケさんとシンガーのKIMIYO(キミヨ)さんが、久我山ホタル祭りのテーマソング「あなたの故郷どこですか」を披露した。ホタル祭りが中止となった2020(令和2)年に、毎年開催されていたホタル祭りのことを思い、弓削田さんが作詞、サスケさんが作曲を担当した曲で手話の振り付けがある。歌や手話を教えてもらったり、クイズをしたりと、なごやかな雰囲気の中、最後にみんなでもう1度「あなたの故郷どこですか」を歌ってミニライブは終了した。
「さぁ、そろそろ日が暮れるかな。神田川のホタルを見に行こう」
夕方6時半過ぎ、神田川放流場所へ到着した。「清水橋」から京王井の頭線富士見ヶ丘駅の南にある「月見橋」までが観賞のスポットになっており、徐々に人も増え始めてきた。弓削田さんが「今は富士見ヶ丘検車区になっているこの辺りも、1960(昭和35)年頃までは全部田んぼで、本当にホタルが飛んでいたのよ」と子供の頃の思い出を話してくれた。
やがて日没を迎えると、あちこちから「光るホタルを見つけた」と声が上がり始めた。
「ほんとだ~。葉っぱに止まってかすかに黄色く光っているホタルや、ふんわりと光を放って飛ぶホタルがいる~」
多くの人が輝くホタルを写真に収めたり、ホタルの場所を教え合ったりしながらゆっくりと散策していた。
「昼間から夜まで大人も子供も楽しめるイベントがたくさんで最高だったな~。お祭りの後、1週間ぐらいは神田川、玉川上水、宮下橋公園でホタルが見られるそうだよ。来年もまたホタルに会えるといいな」