阿佐ケ谷駅の北口から徒歩約1分、飲食店が集まる一角に「喫茶 天文図舘(てんもんずかん)」がある。生まれも育ちも阿佐谷付近という店主の山城隆輝(やましろ りゅうき)さんが、土地勘のある街で2020(令和2)年8月に開業した。「空間や内装に興味があり、理想としていたのは、ここの2階のような空間。不動産屋で紹介されたこの物件は、それに1階も付いていたので即決です」と言う。
山城さんの理想の空間とは、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が醸し出す雰囲気で、静かにリラックスして過ごせる所。1階は6人程度座れるカウンター席、2階は1~2人用のテーブル席が4つ。駅近くにありながら、静謐(せいひつ)なひとときを楽しめる。
「いろいろな年代の方が来てくださいますが、外から店内の様子がわからないので、通りすがりでは入りづらいようですね。口コミや、ネットで調べていらっしゃる方がほとんどです」と山城さん。店名は『銀河鉄道の夜』にちなんで「天文」に、また「植物でも動物でも一冊にまとめられている図鑑のように、いろんな人の人生を一つにまとめる意味もこめて“ずかん”としました。古い感じを出したくて“舘”という字を使っています」と語る。
2階の本棚には、客が思いのままに書いた置き手紙が、本と本との間に差し込まれている。宿などに置いてあるメッセージノートから思いついたそうだ。「お客さまが書く手紙が、他の誰かの心を少しだけ救うこともあるのではないかと。いずれ本棚を手紙でいっぱいにできたらいいなと期待しています。店内は時間を経ることで経年劣化ではなく、愛着が深まり魅力を増していくのが理想です」
人気のドリンクは、見た目も映える「ラムネクリームソーダ」(750円)。他2種類のクリームソーダに加え、旬の食材を利用した期間限定の「梅のクリームソーダ」(時価)もある。「紅茶」(500円)も注文が多く「お客さまからおいしいミルクティーの入れ方を指南され、実際そうしてみたら好評でした」と味の改善にも余念がない。
軽食の「オムライス」(850円)や「ナポリタン」(800円)は「店内の雰囲気にも合うような懐かしい味をイメージし、手間をかけて作っています」とのこと。「オムライス」は、少し甘めのケチャップ味のチキンライスが、たっぷりの卵で包まれている。シンプルな見た目だがとてもおいしい。軽食については、メニューを増やしてほしいというリクエストを多く受けるそうだ。
毎月第3日曜日の10時から12時30分には、有意義な週末を過ごしてほしいと「もくもく読書会」を実施。会話厳禁、スマートフォンを店に預けるのでデジタルデトックスにもなる。
また、2022(令和4)年7月~9月には、同じ阿佐谷にある「たいやき ともえ庵」とのコラボイベントを開催。「ともえ庵」のかき氷とお任せメニューからなる「かき氷のミニコース」を「天文図舘」で楽しんでもらう企画である。「ともえ庵」のオーナーは「自分がおいしいと感じるものを多くの人に食べてほしい。それを味わってもらうのに、ここの雰囲気はふさわしい。この店で食べるかき氷は、暑い戸外で食べるのとは違った感じがあると思います」と話す。
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