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遺稿集 ある道化師の一日

著:永島慎二(小学館クリエイティブ)

永島慎二(ながしま しんじ)は、昭和30~40年代に始まった青年漫画のジャンルで活躍し、「青年漫画の教祖」とたたえられた漫画家である。主な著書は『フーテン』『漫画家残酷物語』『黄色い涙』『柔道一直線』など。没後、2007(平成19)年2月に、『遺稿集 ある道化師の一日』(私家版)を妻・小百合さんが発行した。同年8月、資料的な価値の高さを評価され、普及版として発行されたのが本書である。
作品紹介をはじめ、エッセイの抜粋、日記、年賀状コレクション、木版画、油絵、イラスト、スケッチなど、内容は多岐にわたるが、決して散漫ではない。子供の頃から晩年までの永島の足跡をたどれる構成になっており、読後、氏と昔からの知り合いだったような気持ちになれる。最後の漫画作品であり、書名となった『ある道化師の一日』も収められている。

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おすすめポイント

1960(昭和35)年以降、45年間にわたり杉並区で暮らした永島は、自身の日記のタイトルを「阿佐谷日記」とするほど阿佐谷への愛着が深かった。日記と共に本書に収められている1985(昭和60)年に書かれた「阿佐谷村の午後」というエッセイもいい。釣り堀「寿々木園」などが登場する何げない毎日の描写の中に、昭和から平成にかけての阿佐谷の雰囲気、風景が描かれている。また、南口の商店街のスケッチや「阿佐ヶ谷南口風景A」と題された油絵も紹介されている。その時代を生きた人のリアルな息遣いと共に少し昔の阿佐谷を、体感できる一冊としてもお薦めしたい。

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※本書は絶版となっている。区立図書館に蔵書がある

昭和40年代の阿佐谷パールセンター(写真提供:阿佐谷商店街振興組合)

昭和40年代の阿佐谷パールセンター(写真提供:阿佐谷商店街振興組合)

DATA

  • 取材:スガイミキ
    写真提供:阿佐谷商店街振興組合
  • 掲載日:2023年07月18日