母から受け継いだきよ香の「おふくろの味」を、開業から60年を超えた今でも、貫太郎さんが守っている。店でお勧めの沖縄家庭料理3品を教えてもらった。
「ラフティー(豚の角煮)」(990円)は、焦げるぎりぎりまで半日かけて泡盛で煮込む。軟らかく、脂身のとろけるような口当たりが楽しめる一品。「母の頃から変わらない秘伝の味付けです」と貫太郎さん。
沖縄県外ではあまりなじみのない「ナーベラー(ヘチマの味噌炒め)」(880円)は、若いヘチマを使った家庭料理。沖縄では、ヘチマは、味噌汁やチャンプルーにも用いられる便利な食材だそうだ。
そして、定番の「沖縄そば」(880円)は、豚骨とかつおでだしをとっており、濃厚な味わい。石垣のかまぼこ、スペアリブ、スパムなど、沖縄ならではの食材もトッピングされている。
コーナーテーブルや座敷では、グループ客の会話が弾む。一人でふらりと訪れて、カウンターでお勧めの料理や酒を堪能するのも、きよ香の楽しみ方だ。沖縄出身のお笑いタレントや歌手、元沖縄県知事など、ゆかりの著名人からも愛されている。「具志堅用高さん(元ボクシング世界王者)は、うちのサーターアンダギーが好物と仰っていました」
貫太郎さんは「沖縄に感謝しながら、地元高円寺にお返しがしたい」と語る。きよ香や近隣の沖縄料理店で、沖縄民謡やフォークソングのライブなど、沖縄の文化を体感できるイベントも定期的に開催している。「三線や沖縄空手も広めていきたい。今後も、沖縄文化の発信地として、高円寺の街を盛り上げていきたいと思います」
『ただ、誠を尽くして浮世を渡る』高橋淳子(日本出版社)