ヤゴ救出とは、都市部の学校プールに産卵し繁殖したヤゴをプール開き前の清掃で流されてしまう前に救出し、環境学習の教材にしようとする活動だ。東京都では2000年頃より環境学習リーダー向けの講習が行われている。
慶応義塾幼稚舎の清水研助先生が呼びかけて行っているヤゴ救出ネットは2000(平成12)年4月から始まり、ヤゴの識別を大まかに4種類で分類する方法を提唱しマスコミ等で取り上げられ注目を集めた。
今日でこそ多くの自治体が実践しているヤゴ救出活動だが、杉並区の取り組み開始は2000(平成12)年にまで遡る。当時の参加校は全国でもわずか数十校に過ぎず、東京都環境学習リーダーの境原達也氏から区側への発案が礎となった。
2002(平成14)年、区環境課の提唱により環境団体「すぎなみ環境カエルくらぶ」が発足。区内小中学校へヤゴ救出活動への参加を呼びかけたところ、2004(平成16)年度には計34校(区内の小・中学校総数の51%に相当)が何らかの形で参加した。
「すぎなみ環境カエルくらぶ」は2009(平成21)年に解散したが、『ヤゴ救出大作戦マニュアル』の作成など後々の活動に有益な成果を残した。また、解散にあたり区内全小学校に30本づつのタモ網を配ったことで各校が独自に活動できるようになり、ヤゴいかだ(※)を設置するなど工夫を凝らす学校も増加。2021(令和3)年度のヤゴいかだ設置校は12校に及んでいる。
境原氏はこのヤゴ救出活動について、「活動を通じヤゴという生物を知ることで、ヤゴが生存できる環境や生態系に関心を持って欲しい。それが環境への愛に繋がり、ひいては環境保全活動に子供たちが参加するようになることを願う。」と語る。
長きにわたり、杉並区の子供たちの手で積み上げられてきたデータは、全国的に見ても貴重なものである。このうち2003年度~2021年度のデータについては、すぎなみ環境ネットワークのホームページ上から閲覧可能(http://www.ecosuginet.jp/03sizen_2.html)。救出されたヤゴの分類結果のほか、周囲の環境や他の生物に関する統計結果も公開されている。『ヤゴ救出大作戦マニュアル』共々、詳細についての問い合わせは同法人まで。
※ヤゴいかだ:産卵場所を求めて飛来するトンボを誘導するための仕掛け。仕掛けの上に笹の枝葉や落ち葉を乗せて、水辺の植物に卵を産み付けるタイプのトンボを誘導する。
▼問い合わせ
NPO法人すぎなみ環境ネットワーク
住所:杉並区高井戸東3-7-4
電話:03-5941-8701
公式ホームページ http://www.ecosuginet.jp/