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ヤゴ救出大作戦2(実践レポート)

2022年度 杉並第一小学校での実践 ※2022年6月13日加筆

2022(令和4)年5月17日、阿佐谷にある区立杉並第一小学校でヤゴ救出授業が1・2時間目の総合の時間に行われた。3年生2クラスの児童、保護者、教員に加え、講師役としてNPO法人すぎなみ環境ネットワークのメンバーとヤゴ救出サポーター計4名が参加した。
前日に水深約30㎝まで水を減らしており、プールの底に落ち葉が積もっているのが見えた。この日の天気は曇りで水温は20度ほど。カモがヤゴを狙ってプールの中にまで飛んできたため、環境ネットワークの境原さんが「早く追い払わないと食べられてしまう」と心配するなか、児童らは講師陣の指導のもと、プールに入って底をさらう網係とプールサイドでヤゴを探す係に分かれ、途中で交代しながら作業を進めた。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 自然>トンボ>ヤゴ救出大作戦1(概要)

片面が平らになった専用の網を使ってプールの底の泥や葉をさらう網係の児童

片面が平らになった専用の網を使ってプールの底の泥や葉をさらう網係の児童

大きくて見分けやすいギンヤンマ系のヤゴ。抜け殻も見つかった

大きくて見分けやすいギンヤンマ系のヤゴ。抜け殻も見つかった

網係の児童は運動靴やプール用シューズを履いて臆することなく水の中に入っていくが、ヤゴを探す係の中には、泥や昆虫に触るのをためらって手が出せない子も多かった。しかし、クラスメートから「ヤゴ見つけた!」「大きいのがいる!」と元気な声が上がるにつれて、怖がっていた子も恐る恐る手のひらにヤゴを乗せ「もぞもぞしてる。くすぐったい」と笑顔を見せた。
この日の成果は、アカネ系225頭、シオカラトンボ1,142頭、ギンヤンマ系443頭、イトトンボ30頭で、「この時期にしては多いほうだ」と境原さんは言う。救出されたヤゴのうち成長が進んだものは、教室や児童の自宅で育てることになった。サポーターの宮島さんは「一人ではこんなにたくさんの命は救えない。友達と力を合わせてやり遂げたということを、ぜひ覚えていてほしい」と語った。
2022年度は、杉並第一小学校を含め、区内外の19校でヤゴ救出授業が行われた。境原さんは「ヤゴ救出の参加校は減っているが、ヤゴいかだを設置する学校が増えている。中野区の小学校も数年前からヤゴ救出を始めた」と教えてくれた。

泥や葉をかき分けてヤゴを探す係。指先でそっとつまんで捕まえる

泥や葉をかき分けてヤゴを探す係。指先でそっとつまんで捕まえる

種類ごとに10頭ずつ小皿に分けて集計する

種類ごとに10頭ずつ小皿に分けて集計する

2014年度 杉並第七小学校での実践

2014(平成26)年6月5日(木)、ときおり小雨がぱらつく中、区立杉並第七小学校の3年生2クラスの児童たちによってヤゴ救出活動が行われた。
授業にはゲスト講師としてNPO法人すぎなみ環境ネットワークの方々も参加。挨拶と作業説明のあと、1クラスごと交代でプールに入ることになった。プールの水は安全を考慮して水深20㎝ほどに減らしてあるが、落ち葉や泥で濁っており、子供たちは入るのに勇気がいる様子。この積もった落ち葉を専用の網ですくって、中にいるヤゴたちを探すのだ。水底をさらいやすいように上部が平になっている網を持ち、滑らないようにすり足で落ち葉を集めていく児童たち。水を含んで重たくなっている葉をがんばってすくい上げ、プールサイドに乗せてみると…、いたいた!2㎝ほどのアカネ系のヤゴが、葉をめくるたびにセカセカと現われる。「うわぁ、いっぱい!」「早く捕まえなきゃ!」あちこちから子供たちの嬉しそうな声が挙がった。
プールに入っていないほうのクラスとお手伝いの保護者は、ヤゴの数の集計を担当。バケツに集められたヤゴを小皿で10頭ずつに分け、種類ごとに数えていく。集計したヤゴは水槽に移すのだが、どんどん数が増えていき「共食いしないかな」と子供たちから心配の声が出るほどであった。

専用の網でプールの底をさらってヤゴを見つける

専用の網でプールの底をさらってヤゴを見つける

ヤゴ発見!

ヤゴ発見!

この日、杉七小で見つかったヤゴはほとんどがアカネ系で、その数は約2,860頭にものぼった。「小雨のため短時間で行ったにしてはかなりの数です。プールにいた半分くらいを救えたのではないでしょうか」とゲスト講師の方々も笑顔を見せる。その他の救出結果は、シオカラトンボのヤゴ2頭、カゲロウ2頭、アメンボとユスリカが少々。ヤゴのエサになるアカムシも少ないながらも見つかった。
学校・地域コーディネーターの長澤さんによると、ヤンマ系のヤゴを呼ぶにはプールに仕掛けいかだを設置する必要があるそうだ。「アカネ系は水中に産卵しますが、ヤンマ系は木の葉に卵を産みます。仕掛けいかだを浮かべる学校ではヤンマ系が多く見つかります。アカネ系のヤゴが大きなヤンマ系に食べられてしまうからです。5月30日にヤゴ救出を行った区立杉並第九小学校では、ヤンマのヤゴ約460頭、アカネ系約240頭、シオカラ約100頭という集計結果でした」
救出したヤゴは、学校の教室や児童たちの自宅で羽化まで大切に育てられる。今年の夏、杉並の空を舞うトンボは、児童たちが救ったヤゴの成長した姿かもしれない。

どれくらい取れたかな?

どれくらい取れたかな?

ヤゴを種別ごとに集計

ヤゴを種別ごとに集計

2008年度 高井戸第三小学校での実践

2008(平成20)年6月14日(土)晴天の下、区立高井戸第三小学校で、父兄を中心とした「フェス高三小実行委員会」が運営する土曜学校「フェスたかさん」の時間にヤゴ救出大作戦が行われた。お父さんも童心に返って楽しくヤゴを救出した。

まずは紙芝居でヤゴ救出大作戦の意義や実践方法を勉強した。
プールは屋上にある。水が深いと作業がやりにくいので、事前にひざの高さまで排水した。屋上プールはヤゴのエサとなる虫をはぐくむ落ち葉が足りないので、前年秋に落ち葉を人の手によって投入してある。これをエサにプランクトンや小生物が発生し、ヤゴがそれを食べると言う食物連鎖が生じている。

【写真A】
左:プールの南側には木が生い茂っているが、そのちょっと先には首都高速道路が走っている。
右:プールの東側には新宿の高層ビル群を望むことができる。都心に程近い住宅地にいったいどれだけのヤゴが見つかるのか。

事前説明

事前説明

いよいよプールへ

いよいよプールへ

【写真A】

【写真A】

【写真B】
左:早く成長したヤゴが水から上がって羽化できるように枝などのはしごを設置しておいた。枝やプールサイドにはヤゴの抜け殻が落ちていた。
右:ヤンマの抜け殻。

【写真C】
左:一人ずつ慎重にプールに下りる。プールの底は滑りやすいので運動靴履きで入る。
中:みんなで一列に並んで慎重に網を動かしていく。底をさらうように落ち葉ごとプールサイドにすくい上げる。
右:すくい上げた落ち葉の中にヤゴがいないか丁寧に探す。

【写真B】

【写真B】

【写真C】

【写真C】

【写真D】
左:脱皮したばかりのヤゴは淡い色をしている。
中:見つけたヤゴは種類ごとに分けて容器に入れる。
右:種類分けしたヤゴは10頭ごとに大きな容器に移し、正の字でカウントしていく。

【写真E】
左:使った道具はきれいに片付け。
中:ヤゴを救ったあとの落ち葉は袋に集める。これは校内でたい肥の材料となる。
右:教室に戻りヤゴの集計をした。最終的にアカトンボ型913頭。シオカラトンボ型318頭。ヤンマ型469頭。イトトンボ4頭。他にアメンボが少し見つかった。

【写真D】

【写真D】

【写真E】

【写真E】

DATA

  • 取材:ヤマザキサエ、山中悠、藤山三波、小泉ステファニー
  • 撮影:ヤマザキサエ、山中悠、藤山三波、TFF
  • 掲載日:2009年05月02日