2022(令和4)年5月17日、阿佐谷にある区立杉並第一小学校でヤゴ救出授業が1・2時間目の総合の時間に行われた。3年生2クラスの児童、保護者、教員に加え、講師役としてNPO法人すぎなみ環境ネットワークのメンバーとヤゴ救出サポーター計4名が参加した。
前日に水深約30㎝まで水を減らしており、プールの底に落ち葉が積もっているのが見えた。この日の天気は曇りで水温は20度ほど。カモがヤゴを狙ってプールの中にまで飛んできたため、環境ネットワークの境原さんが「早く追い払わないと食べられてしまう」と心配するなか、児童らは講師陣の指導のもと、プールに入って底をさらう網係とプールサイドでヤゴを探す係に分かれ、途中で交代しながら作業を進めた。
網係の児童は運動靴やプール用シューズを履いて臆することなく水の中に入っていくが、ヤゴを探す係の中には、泥や昆虫に触るのをためらって手が出せない子も多かった。しかし、クラスメートから「ヤゴ見つけた!」「大きいのがいる!」と元気な声が上がるにつれて、怖がっていた子も恐る恐る手のひらにヤゴを乗せ「もぞもぞしてる。くすぐったい」と笑顔を見せた。
この日の成果は、アカネ系225頭、シオカラトンボ1,142頭、ギンヤンマ系443頭、イトトンボ30頭で、「この時期にしては多いほうだ」と境原さんは言う。救出されたヤゴのうち成長が進んだものは、教室や児童の自宅で育てることになった。サポーターの宮島さんは「一人ではこんなにたくさんの命は救えない。友達と力を合わせてやり遂げたということを、ぜひ覚えていてほしい」と語った。
2022年度は、杉並第一小学校を含め、区内外の19校でヤゴ救出授業が行われた。境原さんは「ヤゴ救出の参加校は減っているが、ヤゴいかだを設置する学校が増えている。中野区の小学校も数年前からヤゴ救出を始めた」と教えてくれた。
2014(平成26)年6月5日(木)、ときおり小雨がぱらつく中、区立杉並第七小学校の3年生2クラスの児童たちによってヤゴ救出活動が行われた。
授業にはゲスト講師としてNPO法人すぎなみ環境ネットワークの方々も参加。挨拶と作業説明のあと、1クラスごと交代でプールに入ることになった。プールの水は安全を考慮して水深20㎝ほどに減らしてあるが、落ち葉や泥で濁っており、子供たちは入るのに勇気がいる様子。この積もった落ち葉を専用の網ですくって、中にいるヤゴたちを探すのだ。水底をさらいやすいように上部が平になっている網を持ち、滑らないようにすり足で落ち葉を集めていく児童たち。水を含んで重たくなっている葉をがんばってすくい上げ、プールサイドに乗せてみると…、いたいた!2㎝ほどのアカネ系のヤゴが、葉をめくるたびにセカセカと現われる。「うわぁ、いっぱい!」「早く捕まえなきゃ!」あちこちから子供たちの嬉しそうな声が挙がった。
プールに入っていないほうのクラスとお手伝いの保護者は、ヤゴの数の集計を担当。バケツに集められたヤゴを小皿で10頭ずつに分け、種類ごとに数えていく。集計したヤゴは水槽に移すのだが、どんどん数が増えていき「共食いしないかな」と子供たちから心配の声が出るほどであった。
この日、杉七小で見つかったヤゴはほとんどがアカネ系で、その数は約2,860頭にものぼった。「小雨のため短時間で行ったにしてはかなりの数です。プールにいた半分くらいを救えたのではないでしょうか」とゲスト講師の方々も笑顔を見せる。その他の救出結果は、シオカラトンボのヤゴ2頭、カゲロウ2頭、アメンボとユスリカが少々。ヤゴのエサになるアカムシも少ないながらも見つかった。
学校・地域コーディネーターの長澤さんによると、ヤンマ系のヤゴを呼ぶにはプールに仕掛けいかだを設置する必要があるそうだ。「アカネ系は水中に産卵しますが、ヤンマ系は木の葉に卵を産みます。仕掛けいかだを浮かべる学校ではヤンマ系が多く見つかります。アカネ系のヤゴが大きなヤンマ系に食べられてしまうからです。5月30日にヤゴ救出を行った区立杉並第九小学校では、ヤンマのヤゴ約460頭、アカネ系約240頭、シオカラ約100頭という集計結果でした」
救出したヤゴは、学校の教室や児童たちの自宅で羽化まで大切に育てられる。今年の夏、杉並の空を舞うトンボは、児童たちが救ったヤゴの成長した姿かもしれない。
2008(平成20)年6月14日(土)晴天の下、区立高井戸第三小学校で、父兄を中心とした「フェス高三小実行委員会」が運営する土曜学校「フェスたかさん」の時間にヤゴ救出大作戦が行われた。お父さんも童心に返って楽しくヤゴを救出した。
まずは紙芝居でヤゴ救出大作戦の意義や実践方法を勉強した。
プールは屋上にある。水が深いと作業がやりにくいので、事前にひざの高さまで排水した。屋上プールはヤゴのエサとなる虫をはぐくむ落ち葉が足りないので、前年秋に落ち葉を人の手によって投入してある。これをエサにプランクトンや小生物が発生し、ヤゴがそれを食べると言う食物連鎖が生じている。
【写真A】
左:プールの南側には木が生い茂っているが、そのちょっと先には首都高速道路が走っている。
右:プールの東側には新宿の高層ビル群を望むことができる。都心に程近い住宅地にいったいどれだけのヤゴが見つかるのか。