国内4箇所の地域に、杉並区民がリーズナブルに泊まれる区の民営化宿泊施設(※1)と協定旅館がある。民営化宿泊施設は、富士山観光に便利な「富士学園」(※2)や、伊豆の海にほど近い「弓ヶ浜クラブ」(※3)など、いずれも自然を満喫できる施設ぞろい。区内在住者がこれらを利用する場合には、2000円の宿泊補助が適用される(※4)。
このほか、北塩原村と青梅市には協定宿泊施設が複数あり、利用する際に割引サービスを受けることが可能だ。
これらの宿泊施設の多くは杉並区の交流自治体にある(※5)。旅先の選択肢の1つとして活用してみてはいかがだろうか。
▼関連情報
杉並区ホームページ>保養施設・宿泊施設(外部リンク)
※1 杉並の宿泊施設は区施設としての営業を終了し、2002(平成14)年より民営化施設として営業している。
※2 「富士学園」は廃止しました
※3 「弓ヶ浜クラブ」は廃止しました
※4 65歳以上または障害のある方は3000円の宿泊補助が適用される。
※5 交流自治体以外では、神奈川県の湯河原町に協定旅館「湯の里杉菜」がある
区は国内外の13の自治体と協定等を結び(図参照)、さまざまな交流を行なっている。自治体間交流の始まりについては、文化・交流課発行のパンフレットに「杉並区のような都市の自治体と、自然豊かな地方の自治体が交流することで、お互いに失われつつあるものを補い、交流を通して生活に活力とうるおいを育むことを目的にスタートした。」とある。
最初の自治体協定は、1989(平成元)年に北海道名寄市(旧風連町)、群馬県東吾妻町(旧吾妻町)と結ばれた。文化・交流課交流推進担当によると、「この時期は全国各地で自治体同士の交流が積極的に行われており、杉並区も交流先を探していました。いろいろと調査・検討をした結果、数件の候補地の中から最終的にこの2つの自治体に決まったのです。」とのこと。どちらも自然に恵まれていることが決め手になったそうだ。こうして名寄市とは「交流自治体協定」を、東吾妻町とは「友好自治体協定」が結ばれ、現在も子供たちの交流や物産展などを通して友好の輪が広がっている。
交流自治体の中には、防災に関わる「災害時相互援助協定」や「防災相互援助協定」を結んでいる都市もある。これは地震等により災害が発生した場合、両自治体が互いに協力し、応急対策や復旧対策をするための協定である。先に述べた名寄市、東吾妻町とは、この協定も結んでいる。
2004(平成16)年、杉並区は5月に新潟県小千谷市と「災害時相互援助協定」を締結した。その5ヵ月後に新潟県中越地震が発生。最大震度7を観測する地震で大きな被害が出たが、杉並区はいち早く援助に乗り出した。
また、2005(平成17)年には福島県南相馬市(旧原町市)と「災害時相互援助協定」を締結。2011(平成23)年に発生した東日本大震災の際には、杉並区は南相馬市の援助にいち早く駆けつけたのである。このときは、小千谷市や東吾妻町からも南相馬市を支援したいという声があり、多くの被災者に対し支援を行った。また、名寄市からは南相馬市の支援として特産品である餅やひまわり油の提供があった。こうして、区が防災協定を結んだ交流自治体同士にも、杉並区を通じて新たな交流が誕生する運びとなった。
東日本大震災以降、杉並区は災害に対する備えのあり方をより重視し、東京都青梅市や静岡県南伊豆町など新たに5つの自治体と「災害時相互援助協定」を締結している。
海外にも杉並の交流自治体はある。文化・交流課交流推進担当は、「いずれも緑の多い住宅都市で、杉並と環境が似ている」と言う。
オーストラリア連邦のウィロビー市とは、1990(平成2)年に友好都市協定を締結。小中学生を対象とした海外留学や、ラグビーが盛んなためラグビーの親善試合などが行われている。
1991(平成3)年に交流自治体となった大韓民国の瑞草区とも、区の職員同士が半年間お互いの都市で業務にあたる職員交流を実施している。
また、2013(平成25)年に「青少年交流推進宣言」を取り交わした台湾台北市とは、中学生親善野球大会を毎年開催。名寄市や南相馬市、南伊豆町のチームも参加して熱戦を繰り広げている。そのほかにも、2015(平成27)年から隔年ごとに東京高円寺阿波おどり振興協会所属の踊り手が台湾各地で踊りを披露している。3回目の開催となった2019(平成31)年4月の公演では、160名の踊り手が台湾の街を練り歩き、会場を大いに沸かせた。
このように海外の交流自治体と杉並区は、留学や研修、スポーツ、文化などを通して親睦を深めている。
地方色に富んだ交流自治体の良さに触れるなら、実際に現地を訪ねてみるのが一番だろう。杉並区の後援で、交流自治体に行くツアーが毎年いろいろと企画されている。世界最大とされる4尺玉の花火が見られる「片貝まつりと小千谷の魅力体験ツアー」や、星空見学やそば打ちが体験できる「初夏のなよろを楽しむツアー」等、観光やグルメとプラスアルファのお楽しみのあるプランが豊富だ。
もっと手軽に各自治体の魅力を知るのであれば、杉並区内で開催される物産展に足を運ぶのがおすすめである。中でも区役所で定期的に開かれる自治体の物産展は気軽に立ち寄れる。新鮮野菜が並ぶ「吾妻の朝市」や、伊勢海老の味噌汁の試食が名物の「南伊豆町観光物産展」、名寄市の「アスパラまつり」など、地方の特色や季節感あふれる内容で好評だ。販売しているのは各自治体の職員や農家の方々で、買いに来る区民と会話を通じて暖かな交流も生まれている。また、11月の「すぎなみフェスタ」では「交流自治体合同物産展」が開かれ、どの自治体のブースも人気を集めている。
一方で、各自治体から杉並区に「まつりに来てほしい」と声がかかることも多い。そこで、東京高円寺阿波おどり振興協会所属の踊り手が各地の祭りで阿波おどりを披露したり、交流自治体主催のイベントで区内の名店の品を販売するなど、多彩な交流をしている。
文化・交流課交流推進担当は、「杉並区にはたくさんの交流自治体があり、それぞれに魅力がいっぱいです。ぜひ一度足を運んでいただきたい。」と語る。ツアーやイベントに参加したり、宿泊施設を利用してみれば、きっと自治体間交流の目的のように「生活に活力とうるおいを育める」ことだろう。