東吾妻町をじっくり観光したいのであれば、「コニファーいわびつ」に滞在するのがおすすめだ。1994(平成6)年に「すぎなみ自然村」として設置され、2002(平成14)年にリニューアル、現在はフォレストグループが運営している民営化宿泊施設である。杉並区民(区内に住所を有す)は1泊2,000円(高齢者3,000円)の補助を受けて利用できるうえ(※1)、阿佐ケ谷駅南口から無料送迎バスも運行しているので(※2)、有効に活用したい。
東京ドーム約4個分に相当する56,000坪の敷地内には、露天風呂を備えた本館のほか、体育館、テニスコート、天然芝グラウンドなどのスポーツ施設を完備。また、本格的なカナディアンログハウスが8棟あり、「他の客に気兼ねせずに宿泊できる」とグループや子供連れの客に喜ばれている。なおペット同伴可能なログハウスもある。館内には、ベビーベッドや子供用浴衣などの乳幼児用のグッズも充実しており、夏にはカブトムシやクワガタ捕りができるので、子育てファミリーも楽しく宿泊できるだろう。
福村支配人は、「休日は主に子供連れのご家族が観光やレジャーの拠点として、平日はご年配の方が湯治などにご利用してくださっています。東吾妻町は季節ごとにさまざまな楽しみ方があるので、杉並区からのリピーターが多いです」と話す。予約は宿泊日の6カ月前から可能。ゴールデンウィークや夏休み、年末年始などの繁忙期はすぐに満室になるので、早めの予約を心掛けたい。
※1 65歳以上の高齢者と障害者は3,000円の補助
※2 運行状況は「広報すぎなみ」に定期的に出る案内を参照。もしくは電話で問い合わせ
町のシンボルである岩櫃山には、真田幸村が幼少期を過ごしたとされる岩櫃城があった。2016(平成28)年のNHK大河ドラマで「真田丸」が放映されて以来、真田家ゆかりの地として注目が集まっている。岩櫃城本丸址の近くには、観音山不動滝などを巡るハイキングコースがあるので、挑戦してみてはいかがだろうか。他にも、「赤城の山も今宵限り」のセリフで知られる大衆演劇のヒーロー、国定忠治(※3)にまつわる史跡も町に残る。
国指定名勝「吾妻峡」も東吾妻町の人気スポットだ。渓谷沿いに約1.5kmの遊歩道が整備されており、地元の人が「九州の耶馬渓(※4)にも勝る」と誇る奇岩や崖、滝など、変化に富んだ景色が続く。特に10月下旬~11月中旬の紅葉シーズンの風景は美しく、多くの行楽客で賑わう。また、渓谷の近くには、2020(平成32)年に完成予定の「八ツ場ダム」の建設作業を見物できる「やんば見放台」があり、ダム湖の周辺でサイクリングやウォーキングも楽しめる。
日本名水百選の一つ「箱島湧水」では、6月中旬~7月下旬にかけて、夏の夜空を舞うホタルを見ることが可能だ。箱島不動尊のお堂の脇に樹齢約400年の大杉がそびえだち、その根元から毎日約3万トンの水が湧き出ている。澄みきった水に触れれば、自然の力を感じられることだろう。
東吾妻町を観光したあとに、草津や伊香保、四万といった群馬の有名温泉に足を延ばすのもおすすめだ。
※3 国定忠治(くにさだちゅうじ):江戸後期の侠客(きょうきゃく)。関所破りの罪で処刑された
※4 耶馬渓(やばけい):大分県にある渓谷で、奇岩の連なる絶景として有名
吾妻峡の玄関口に立つ「道の駅 あがつま峡」。直売所や食事処、温泉などがあり、「この施設だけでも長時間楽しめます」と駅長の武藤(むとう)さんは微笑む。
地元の新鮮な土産を購入するなら、農産物直売所「てんぐ」に寄りたい。りんごやしいたけ、こんにゃくなど、東吾妻町の名産品がそろっている。「朝採りのりんごは、早いものは8月末から登場します。特に10月下旬から並ぶ“ぐんま名月”という品種は、市場に出回ることの少ない人気商品なので見逃せません」と武藤さん。「食事処 あがつま亭」の名物メニューは、群馬のブランド豚「やまと豚」を利用した生姜焼き定食。その他、里芋が出回る9~3月の時期だけ味わえるけんちんうどんも好評だという。源泉掛け流しの日帰り温泉「天狗の湯」は、「美肌泉源(宣言)」がキャッチコピー。肌にやさしい泉質が自慢で、露天風呂でもくつろげる。このほかにも、足湯、幼児遊具のある子供広場、無料のドッグランもあり、観光やレジャーの合間に一息つくには最適なスポットだ。
「東吾妻町では、夏から秋にかけて、東吾妻盆おどり、東吾妻ふるさと祭り、岩下祇園(ぎおん)、原町祇園と、地域の祭りがたくさん催されます。また、町内のベーカリーと精肉店とのコラボで作った一品として
“デビルズタンバーガー”を販売しています」と話す武藤さんの言葉からは、町の人々が地元を盛り上げようと工夫しながら取り組んでいる様子が伝わってきた。
▼関連情報
道の駅 あがつま峡(外部リンク)
杉並区と東吾妻町(旧吾妻町)は、1989(平成元)年に友好自治体協定、1995(平成7)年には防災相互援助協定を締結した。
杉並区役所中杉通り側入口前では、定期的に「吾妻の朝市」という物産展を開催している。小松菜やレタスなど季節の新鮮野菜を楽しみに、毎回足を運ぶ区民も多いそうだ。夏には「子ども交流」が行われ、区内の児童たちが自然豊かな町で農業やキャンプ体験をしている。1990(平成2)年には、「ふるさと岩櫃まつり(旧称)」に区の阿波おどり親善訪問団が初参加。この訪問は現在も続き、また東吾妻町からもいわびつ連が「交流自治体連」という合同連として「東京高円寺阿波おどり」に毎年参加するなど、互いに交流を深めている。
※5 フレンドシップスクール:区立中学の1年生が交流自治体などで自然体験をする行事。「コニファーいわびつ」には、2017(平成29)年に7校、2018(平成30)年に4校が宿泊した