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南伊豆町

南伊豆町を代表する「石廊崎」の絶景

南伊豆町を代表する「石廊崎」の絶景

自然の懐に抱かれた町

静岡県賀茂郡南伊豆町は、伊豆半島最南端に位置する人口約8,000人の町である(2020年11月1日現在)。東京からの所要時間は、車で約3時間半、電車で約2時間50分だ。「日本の渚百選」に選ばれている白砂青松(はくしゃせいしょう)の景勝地「弓ヶ浜」や、ダイナミックな海岸風景が展開する「石廊崎」(いろうざき)など変化に富んだ自然景観、年間平均気温17度の温暖な気候、豊富な湧出量の温泉に魅かれ、多くの観光客がこの地を訪れる。2月中旬から3月初旬には「みなみの桜と菜の花まつり」、10月から12月初旬には「伊勢海老まつり」が開催され、人気を呼んでいる。

小学生から始まった交流
杉並区との交流は、区が1974(昭和49)年に区立小学校に在籍する病虚弱児童を対象とした区立全寮制小学校「南伊豆養護学園」(後に「南伊豆健康学園」)を開設したことから始まった(閉園)。1980(昭和55)年には、区立小学校の移動教室のための施設「弓ヶ浜学園」が開設された(廃止)。2012(平成24)年9月14日には「災害時相互援助協定」を締結。また、両役所の職員の相互派遣を通じて、南伊豆町との結びつきが強まった。

▼関連情報
杉並区>杉並区の交流自治体>南伊豆町(静岡県)(外部リンク)
伊勢海老まつり特設サイト(外部リンク)
伊豆漁業協同組合 南伊豆支所(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>てくてく×なみすけpart3>きれいな海とおいしい伊勢エビ!「南伊豆町」取材日記

弓状の海岸線が美しい「弓ヶ浜」

弓状の海岸線が美しい「弓ヶ浜」

伊勢エビは、静岡県一の漁獲量を誇る名産品。「伊豆漁協 南伊豆支所 直売所」では、1㎏を超す大物にも出会える

伊勢エビは、静岡県一の漁獲量を誇る名産品。「伊豆漁協 南伊豆支所 直売所」では、1㎏を超す大物にも出会える

「みなみの桜と菜の花まつり」。青野川沿いに植えられた早咲きの800本の河津桜と菜の花畑、ピンクと黄色の色彩の共演(写真提供:南伊豆町観光協会)

「みなみの桜と菜の花まつり」。青野川沿いに植えられた早咲きの800本の河津桜と菜の花畑、ピンクと黄色の色彩の共演(写真提供:南伊豆町観光協会)

子供中心から多世代へ、広がりを見せる交流

区の小学生の学習の場であった南伊豆町だが、近年は交流の幅が広がっている。南伊豆町企画課地方創生室で、両自治体の交流について話を伺った。

南伊豆町での特別な体験を提案
小学生に、より深く南伊豆町の生活を体験してもらうために、2015(平成27)年より、区内の小学校に通う4~6年生を対象に「子ども漁村交流in南伊豆」が実施されている。子供たちは、夏休みに2泊3日で地元の人々との交流や、干物づくり、海上スポーツなどさまざまな漁村体験を楽しんでいる。また、幅広い年齢の区民を対象とした現地体験型ツアーも2017(平成29)年より年に数回、企画・開催されている。田植え、山・海の幸探しなど季節感あるメニューがそろっており、「町民と交流しながら四季折々の南伊豆町の魅力に触れることができる」と、参加者に喜ばれているそうだ。(2021年度の催行については未定)

区民に南伊豆町の名産品を直送
南伊豆町民が、杉並に出張して地元アピールすることも大切な交流だ。2012(平成24)年から、杉並区役所前で開催される「杉並産直市」や区のイベントに参加して特産品を販売し、区民に食を通して南伊豆町の情報を発信している。「小さな交流を積み重ねて、南伊豆町の知名度を高めていけたら」と、担当者は抱負を語ってくれた。

▼関連情報
南伊豆町ホームページ(外部リンク)
杉並区>交流自治体の実施イベント一覧(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並区のイベント>すぎなみフェスタ

南伊豆町企画課での取材風景

南伊豆町企画課での取材風景

「子ども漁村交流in南伊豆」の風景(写真提供:南伊豆町)

「子ども漁村交流in南伊豆」の風景(写真提供:南伊豆町)

すぎなみフェスタで南伊豆町の名産品を販売。サザエのつぼ焼きや伊勢エビの半身焼きが人気

すぎなみフェスタで南伊豆町の名産品を販売。サザエのつぼ焼きや伊勢エビの半身焼きが人気

区と南伊豆の架け橋「エクレシア南伊豆」

2018(平成30)年3月5日に開設された、南伊豆町と区の自治体間連携による特別養護老人ホーム「エクレシア南伊豆」。全国初となる試みが注目を集めた。館内は、木のぬくもりが心地良く、広い窓からは、緑に囲まれた広々とした敷地を見渡せる。暮らす人が解放感と安らぎを感じるような造りだ。「利用者は地元の食材を味わい、時に外出して南伊豆町の自然に親しむこともあります。区の協力で、高円寺阿波おどりの演舞、阿佐谷七夕まつりの飾り付け、日本フィルハーモニー交響楽団やジャズの出張演奏など、杉並を感じられるイベントも行っています。町民も見学でき、利用者との交流の機会が生まれました」と職員は語る。訪問家族のための宿泊室も用意されているので、区民が南伊豆町を訪れる機会が増えそうだ。

▼関連情報
自治体間連携による特別養護老人ホーム(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並区のイベント>東京高円寺阿波おどり
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並区のイベント>阿佐谷七夕まつり
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並区のイベント>阿佐谷ジャズストリート

自然豊かな環境の中、多くの区民が生活している

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幅広く確保された廊下、通称「いずのえんがわ」。イベントスペースとしても使われる

幅広く確保された廊下、通称「いずのえんがわ」。イベントスペースとしても使われる

南伊豆町を生活の場に-「お試し移住者」募集中

南伊豆町では、2016(平成28)年から、地方移住を考えている人に一定期間町内に住んで生活を体験してもらう「お試し移住」を始めた。1~30泊の短期から始めて、中期、長期と、滞在期間を延ばしていくことが可能で、住まいは南伊豆町が斡旋(あっせん)してくれる。2019(令和元)年度末で、区民の利用者は53組121人とのこと(全利用者は201組467人)。「最初は“エクレシア南伊豆”との関係からアクティブシニアが対象でしたが、今は全世代に働きかけています。50代のリピート率が高く、リタイア後の移住も視野に入れているようです。地元民も移住者への抵抗感が無くなり、空き物件の有効利用も進みました」と南伊豆町企画課地方創生室の担当者は語る。「お試し移住」は、町の活性化につながっているようだ。

杉並区民、原仁さんは「お試し移住」実践中
原仁さんは2018(平成30)年に畑と山林付きの古民家を買い取り、リフォームした。現在はリモートワークを利用し、南伊豆町に1カ月滞在して、1~2週間ほど杉並に戻る生活を送っている。「建物に手を入れて、ここを外国人のバックパッカー向けのゲストハウスにするのが夢です。趣味のお茶や座禅のワークショップを開催し、サロン的な場所にしたいです。南伊豆町が座禅の町になればいいですね」と希望を語る原さん。「お試し移住」を考えている人に向けて、「南伊豆町は、自然に恵まれ、人との交流も楽しめる場所です。自然との共存が大変な面もありますが、興味のある人は“お試し移住制度”を利用してまず行動してみてください」と話していた。

▼関連情報
静岡県南伊豆町・移住ポータルサイト(外部リンク)

役立ち情報が満載の「お試し移住」パンフレット

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移住ライフを熱く語る原さん

移住ライフを熱く語る原さん

南伊豆町観光あれこれ

南伊豆町商工観光課担当者から区民へのメッセージをいただいた。「“良いところを伸ばす”をコンセプトに、自然を利用した観光が町の産業の中心ですが、観光客が見どころを回る形から、体験型にシフトしています。自然に親しめるさまざまなメニューと、町民のフレンドリーな対応が来訪者に喜ばれています。自然豊かな場所、南伊豆町へ、自然に癒されに来てください」。南伊豆町はぜひ訪れたい観光スポットがいっぱいだ。その一部を紹介したい。

南伊豆町といえば海
2019(令和元)年4月1日に開園した「石廊崎オーシャンパーク」は、南伊豆町の新観光名所だ。岸壁に荒波が砕け散る絶景を堪能しながら、石廊埼灯台、伊豆七不思議の一つの帆柱の伝説(※2)を秘めた石室(いろう)神社、縁結びの熊野神社を回る散策路が観光客の人気を呼んでいる。併設の「南伊豆ジオパークビジターセンター」では、ジオガイド(※3)による、ガイドツアーが企画されている。ユネスコ世界ジオパーク(※4)に認定されている伊豆半島ジオパークの自然の成り立ちが学べ、興味深い体験ができる。
南伊豆町観光協会の大野寛さんの一押しがユウスゲ公園近くの「あいあい岬」。海岸線の眺望がすばらしく、特に夕日の美しさは格別とのこと。
動物好きなら、東日本最大の野生ニホンザルの生息地「波勝崎(はがちざき)モンキーベイ」へ。美しい海岸線を背景に、ノミ取りや毛づくろいをしてくつろぐサルたちの愛らしい姿に心が和む。

食で南伊豆町を楽しむ
南伊豆町民の食に触れたい時には、「農林水産物直売所 南伊豆湯の花」がおすすめ。出荷登録をした生産者が直接持ち込んだ南伊豆町の自然の恵みが並ぶ。農・海産物だけでなく、地産の素材を使った総菜、ジャム、ドライフルーツなど多彩な品ぞろえが目を引く。店長の渡邊純平さんによると、生産者の90%以上、顧客の70%が町民とのことだ。できれば品ぞろえが充実している午前中に訪れたい。
スイーツは、扇屋製菓の「メロン最中」が外せない。温泉熱を利用したハウスで、年間を通して栽培される南伊豆町特産の温泉メロンのエキスをあんに使用した逸品だ。1955(昭和30)年に考案されて以来、町を代表する銘菓として親しまれている。

取材を終えて
南伊豆町といえば観光地のイメージが強かったが、訪れてみると、人々の日常の生活と素晴らしい自然が共存している心落ち着く場所だった。取材で出会った方々は、さまざまな立場から南伊豆町の魅力を語ってくださり、わが町を大切に思う気持ちが伝わってきた。

▼関連情報
石廊崎オーシャンパーク(外部リンク)
伊豆半島ジオパーク>南伊豆ジオパークビジターセンター(外部リンク)
波勝崎モンキーベイ(外部リンク)
農林水産物直売所 南伊豆湯の花(外部リンク)
扇屋製菓 本店(外部リンク)


※1 帆柱の伝説:昔、千石船が石廊崎沖で嵐に遭った時、帆柱の奉納を誓い嵐を逃れ、その時切り倒された帆柱が岩室神社に流れ着いたという伝説
※2 ジオガイド:ジオパークのツアーの認定ガイド。ジオパークエリアをめぐり、自然や歴史など、その地域のストーリーを案内している
※3 ジオパーク:ユネスコがSDGs(持続可能な開発目標)の達成のために進めるプログラムの一つ。それぞれのエリアの自然・文化・歴史ストーリーを持続可能な形にしていく取り組み

「石廊埼」の断崖。先端には熊野神社がある

「石廊埼」の断崖。先端には熊野神社がある

サルの王国「波勝崎モンキーベイ」。サルたちは毎朝山から下りてくる

サルの王国「波勝崎モンキーベイ」。サルたちは毎朝山から下りてくる

「あいあい岬」はロマンティックなフォトスポット

「あいあい岬」はロマンティックなフォトスポット

上段:「農林水産物直売所 南伊豆湯の花」。地産果実を使用したドライフルーツが並ぶ<br>下段:「扇屋製菓 本店」のメロン最中。メロンのおいしさが詰まっている

上段:「農林水産物直売所 南伊豆湯の花」。地産果実を使用したドライフルーツが並ぶ
下段:「扇屋製菓 本店」のメロン最中。メロンのおいしさが詰まっている

DATA

  • 取材:村田理恵
  • 撮影:syaeido、TFF
    写真提供:南伊豆町観光協会、南伊豆町
    取材日:2020年10月15日、16日
  • 掲載日:2021年01月05日
  • 情報更新日:2024年04月02日