サブタイトルは「朝寝した休日でもたっぷり楽しめる東京近郊<超>小さな旅」。千葉県の銚子電鉄や、迎賓館と豊川稲荷など、東京都心から気軽に行ける51カ所のスポットが紹介されている。それぞれに徒歩旅行のモデルプランがあり、どれも歩行距離は10km未満、歩行時間は1時間半から4時間ほど。「自然を満喫する徒歩旅行」「不思議を探る徒歩旅行」「街を漂う徒歩旅行」など6つのテーマに分かれているので、目的にあったテーマからスポットを選ぶことができる。
著者は国内や世界約60カ国を徒歩で旅してきた佐藤徹也さん。佐藤さんの思い出を交えた文章には、読者の思い出と重なる部分もあるかもしれない。写真点数も多く、紀行文やガイドブックとして楽しめる。続刊の『東京発 半日徒歩旅行 調子に乗ってもう一周!』とともに、読んで、歩いて、さまざまな「<超>小さな旅」を満喫したい。
杉並区高円寺に暮らしてもうすぐ30年になろうとしています。引っ越しが多い実家で育ったこともあって、これはダントツの長さ。もはや人生の故郷といえるかもしれません。
この街の魅力は数あれど、やはり歩く人の動線主体に街並みができているのが素晴らしい。商店街はもちろん、駅前のロータリーにしても歩行者フレンドリー。自動車の交通量も少なく、それゆえに信号の待ち時間も短くストレスを感じません。
コロナ禍に見舞われて遠出を控えざるを得なかったこの2年間、マスクをつけつつ高円寺中のあらゆる小径(こみち)を「ご近所徒歩旅行」したつもりでしたが、それでも歩き回ればいまだに「こんな路地、あったんだ」という感動に出合えます。
ちょっと心配なのが、コロナ禍もあってか昔ながらの家族経営の店が減りつつあるような気がすること。これは高円寺に限らない現象かもしれませんが、やはりそういった「人の顔をした」店が、街の表情を作っていくような気がします。願わくばこれからも徒歩旅行を満喫できる街並みが続いてくれますように。
「地形を体感する徒歩旅行」の1つとして、杉並区内の桃園川暗渠(あんきょ)を巡るコースが紹介されている。モデルプランは、かつて桃園川の水源があったとされる区立天沼弁天池公園から、中杉通り、中央線高架下、桃園川緑道を通って、神田川との合流地点までを巡る約8.5㎞。スタート地点はJR中央線の荻窪駅、ゴール地点はJR総武線東中野駅が設定されているので、遠方から来る人も挑戦しやすい。コースのところどころで川の流れを彷彿(ほうふつ)させる地形が見られ、暗渠をイメージするのに役立つだろう。桃園川緑道からは高円寺駅周辺への寄り道も可能なので、思いのままに街歩きを楽しむのも一興だ。
自らの足で歩いて、何かを感じたり発見したりすれば、身近な旅も貴重な体験となるに違いない。
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