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NPO法人すぎなみ環境ネットワーク

環境保全活動は、参加者の意見交換でさらに環境問題への意識が高まる

環境保全活動は、参加者の意見交換でさらに環境問題への意識が高まる

杉並の環境活動の主たる担い手

NPO法人すぎなみ環境ネットワークは、杉並区からの受託事業と自主事業により、さまざまな環境保全活動に取り組んでいる団体だ。1994(平成6)年、杉並区内での資源集団回収を取りまとめるために、行政・区民・事業者の三者協働により、前身の「杉並リサイクル協会」を設立。その後、2003(平成15)年に法人化され、現団体名となった。
活動の拠点は、2014(平成26)年に高井戸駅前にオープンした杉並区立環境活動推進センターである。同施設の1・2階では、自主事業の一つ「リサイクルひろば高井戸」を運営。不用品の寄付を随時受け付け、集まった食器・衣類・雑貨などを格安で販売し、その収益を活動に生かしている。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のさまざまな施設>区立環境活動推進センター

自然への「ありがとう」を形にした清掃活動

自然への「ありがとう」を形にした清掃活動

駅から徒歩約1分。自主事業として運営する「リサイクルひろば高井戸」の1階

駅から徒歩約1分。自主事業として運営する「リサイクルひろば高井戸」の1階

三つの分野から成る幅広い環境活動事業

団体の主な活動は、「もったいないの精神を活かす事業」「みどりに親しみ、知り、育てる事業」「環境を意識した暮らし方とコミュニティづくり事業」の3分野で、それぞれ区内在住・在勤・在学者を対象とした講座・講演会・バス見学会を行っている。講座は年間100回以上開催されており、企画は各分野の委員会が担い、参加者が楽しめるようさまざまな工夫を凝らす。「座学での知識習得の講座では人が集まらないんですよ」と話すのは、副理事長で自身も環境カウンセラーとして講師を務める浅岡八枝子さん。特に、自然体験やものづくりの講座が人気だという。募集時期になると、定員に対して10倍ほどの応募者が集まる講座もあり、抽選を行うそうだ。
講座やイベントの案内は、環境ネットワークの公式ホームページや「広報すぎなみ」に掲載している。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 ゆかりの人々>【アーカイブ】杉並の人々>浅岡八枝子さん

「自然の恵みを生かすクラフト教室」の様子。体験を通して楽しめる講座が多い(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

「自然の恵みを生かすクラフト教室」の様子。体験を通して楽しめる講座が多い(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

「冬休み海の環境教室」で作る「マイクロプラスチックnearアートと貝ランプ」(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

「冬休み海の環境教室」で作る「マイクロプラスチックnearアートと貝ランプ」(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

杉並区との連携と、小中高等学校への環境学習支援

杉並区から受託している環境事業は、集団回収の団体登録受け付け、環境全般に関する講座の実施、「かんきょうアイデア展」の開催、フードドライブ事業など、多岐にわたる。事務局長の伊藤学さんは、「多くの人に活動内容を知ってほしい。その中で何か興味があることに参加していただければうれしいです」と話す。
また、環境学習支援のため、要請に応じて区内の小中高等学校に出張している。小中学校の「総合的な学習の時間」では「ヤゴ救出大作戦」「五感を使って春(秋)をさがそう」、高等学校の「人間と社会」の時間では「持続可能な社会づくり」などを実施。講師でもある環境学習コーディネーターの境原達也さんによると「"ヤゴ救出大作戦”を当校の子供たちにも体験させたい、ぜひ来てほしい」と、別の小学校に異動した教員から改めて依頼されることも多いという。自然に触れる魅力的な授業は、子供たちにとっても印象深い学びとなっている。

▼関連情報
すぎなみ学俱楽部 自然>トンボ>ヤゴ救出大作戦1(概要)
すぎなみ学俱楽部 自然>トンボ>ヤゴ救出大作戦2(実践レポート)

4階の事務局ではフードドライブ事業のため、未利用食品を常時受け付けている

4階の事務局ではフードドライブ事業のため、未利用食品を常時受け付けている

区立松ノ木中学校で行われた環境学習支援の様子(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

区立松ノ木中学校で行われた環境学習支援の様子(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

川に親しむ「善福寺川感謝祭」

善福寺川では、生き物調べや野鳥観察など多くのイベントを開催している。その川への感謝の気持ちを込めて、川の中や公園の周りを清掃するという趣旨で、2020(令和2)年から「善福寺川感謝祭」がスタート。2023(令和5)年は、「善福寺川クリーンアップ作戦!(上流)」と題して開催された。この企画は、通年の「川ガキ復活講座」から生まれた。
参加した子供たちは、「湧き水の場所は冷たくて気持ちいい」「魚がいたよ」と、おのおのごみを拾いながら楽しんでいた。拾ったごみの分別を終えた後は、講師と参加者とで意見交換。「不織布マスクのごみが多かった。コロナ禍で体の衛生面に気を使っていたが、川の環境にも意識を向けてほしいと思った」「この川の流域は合流式下水道(※)が採用されているので、私は川に生活排水が流れないように雨の日は水道の使い方を工夫している」など、環境に対する思いやアイデアがシェアされた。

2023年のイベントでは、善福寺川の上流に初めて入って清掃した

2023年のイベントでは、善福寺川の上流に初めて入って清掃した

意見交換では、子供の意見から大人が気付きをもらう場面もあった

意見交換では、子供の意見から大人が気付きをもらう場面もあった

環境への関心と行動の輪を広げ、仲間を増やしたい

会員は随時募集しており、2023(令和5)年7月時点の会員数は約150名。人との出会いや、つながりが生まれることも、環境ネットワークの活動の大きなメリットだ。団体ではメンバーの高齢化が課題となっているが、真剣に取り組んできたことが実を結ぶ出来事もあった。浅岡さんは、「小さな頃から環境学習や講座でいろいろな人と関わりを持ちながら学んだ子が、大人になり会員として戻って来てくれました」とほほ笑む。
学校での環境学習をサポートするボランティア人材として「環境学習サポーター」の育成にも力を入れている。境原さんは、「環境学習に関わる大人も増やしたい。学習計画の立て方や、学校の先生との打ち合わせの進め方などをシステム化して、次世代に引き継いでいきたいです」と語る。

環境学習コーディネーターの境原さん(写真左)と、副理事長の浅岡さん

環境学習コーディネーターの境原さん(写真左)と、副理事長の浅岡さん

「まずは、自然を楽しまなくっちゃ」

境原さんは、「環境についての知識を得ようとするよりも、まずは自然に触れて五感を使って感じてほしい」と話す。自然は「気持ちがいい」「きれいだ」「楽しい」という感覚として気付くことが環境学習のスタート地点になるという。「最初は虫が苦手な子も、慣れてくると“かわいい”と言って触れるようになるのを見るのがうれしいね」
浅岡さんは、「全ての活動の根本となるのは、大人が楽しむ姿を子供たちに見せること。まず、私たち自身が楽しまなくっちゃ」と話す。「善福寺川感謝祭」にしても、単にごみ拾いをするだけではなく、杉並の自然の中、活動を通して会話が生まれ、新しい発見があり、参加者が笑顔になる。「自然に親しむことは、おのずと、自分たちの住む環境を大切にしたいという思いにつながる」と教えてくれた。

※合流式下水道:生活排水と雨水を一つの下水道管で集める方法。安く施工できる反面、大雨時には、市街地を浸水から守るために、処理場の能力超過分の下水を河川に放流しており、水質汚染を引き起こす問題がある。善福寺川では、上流と下流で改善工事を実施中で、令和5年度内に完成の予定

ガラスと陶器のかけらで作るアクセサリーの見本(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

ガラスと陶器のかけらで作るアクセサリーの見本(写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク)

善福寺川上流に生息する魚のカマツカ。子供たちが興味深く観察していた

善福寺川上流に生息する魚のカマツカ。子供たちが興味深く観察していた

DATA

  • 住所:杉並区高井戸東3-7-4 環境活動推進センター 4F
  • 電話:03-5941-8701
  • FAX:03-3331-5212
  • 休業:水曜
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/kankousho/kousha/1007600.html
  • 取材:加藤智子
  • 撮影:加藤智子
    写真提供:NPO法人すぎなみ環境ネットワーク
    取材日:2023年06月29日
  • 掲載日:2023年08月28日
  • 情報更新日:2024年06月12日