文化財としての価値を持つ、著名人が暮らした家を活用した杉並区立大田黒公園・角川庭園・荻外荘公園(2024(令和6)年12月開園予定)。これら「荻窪三庭園」は、最寄りとなる荻窪駅から500m~1kmと、やや距離がある。散歩しながら向かうのも楽しいが、小さな子どもと一緒だったり、歩くことに不安があったりすると、交通手段がほしい。そこで導入されたのがグリーンスローモビリティ(略称グリスロ ※)だ。大田黒公園、荻外荘公園などを循環する1周約2.5kmの路線となっており、2024(令和6)年8月まで実証運行される。11月から本格運行に移行する予定で、荻外荘公園の開園後には、グリスロに乗って「荻窪三庭園」巡りが楽しめそうだ。
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最大の特徴はコミュニティバス「すぎ丸」よりも小さな車両が使用されること。ヤマハ製とタジマ製が各1台導入された。ヤマハ製は5人乗りで、杉並区都市整備部の職員は「扉もなく開放的な車両なので、風を感じることができ、爽快感を味わうことができる」とアピール。タジマ製は7人乗り。こちらは「令和4年度の実証運行時に、運行事業者を含め、扉がないことによる安全面での不安を抱く方がいたため、2台目は扉付きの車両を選定しました」と安全性を強調した。なお運行計画の策定に際しては、これまでの実証運行で出た課題と解決に向けた対応方針を検討しており、運行事業者と安全対策等の協議を重ねることで、万全を期している。
実証運行が開始した2024(令和6)年5月27日に区民ライターは早速乗車。
当日はヤマハ製の車両が使用され、荻窪駅西口停留所から乗り込んだ。モーターで動くため動き出しがスムーズで、通常の路線バスと比べるととても静かだ。5分ほどで大田黒公園停留所に到着。句会の下見で訪れていた年配者が乗車し「かわいいバスだからぜひ乗ってみたかった」とコメント。散歩中の保育園児たちも珍しそうに見たり、手を振ってくれたりした。窓がないことにより周囲の人たちとコミュニケーションが取りやすことも通常のバスにはない特徴だ。グリーンスローモビリティは最大時速19kmで、大きな道を避け、住宅街の中を自転車よりも少し速いスピードで走る。揺れも少なく快適な乗り心地を楽しむうちに、荻窪駅へ戻ってきた。運賃は100円。
交通機関とインターネットサービスなどを組み合わせ、快適な移動サービスを提供するMaaS(マース)の取り組みが全国で拡大中。具体的には、グリーンスローモビリティに限らず、鉄道、バス、自転車など交通機関を横断して最適な経路検索をする仕組みや、インターネット決済を利用したお得な乗車券の発売などが挙げられる。
杉並区でもグリーンスローモビリティの本格運行に合わせてMaaSの実証実験を予定。「MaaSを活用することにより、地域住民や来街者の移動を活性化していきたい」と考えている。
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杉並区>グリーンスローモビリティの本格運行に向けた取り組み(外部リンク)
※グリーンスローモビリティ:時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス、またはその車両も含めた総称