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杉並の伝説と方言

著:森泰樹(杉並郷土史会)

郷土史家・森泰樹(もり やすじ)氏による杉並郷土史叢書(※)の4作目。杉並にも古くから語られてきた伝説が数多く存在している。本書では、森氏が区内の古老たちから聞いた62話を旧村ごとに紹介。伝説ではなく実話もあるが、森氏は本書のあとがきに「実話を伝説として取り上げるべきではないのですが、活字にして置かないと消え去る惧(おそ)れがあるので、敢えて記載しました」と書いている。
杉並の方言については、農村時代の杉並に使われていた方言2,300語余りをアイウエオ順に列記し、方言集としてまとめた。収録された方言の多くは古老からの聞き書きだが、杉並のみの方言、または杉並で生まれた方言はごくわずかで、ほとんどは武蔵野一帯の方言と共通している。
題字は井伏鱒二(いぶせ ますじ)氏による。1980(昭和55)年出版。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 ゆかりの人々>知られざる偉人>森泰樹さん【前編】
すぎなみ学倶楽部 ゆかりの人々>知られざる偉人>森泰樹さん【後編】

おすすめポイント

旧和田堀村には、永福寺の境内にある地蔵尊を子どもがいない夫婦が洗い清めたら、子宝に恵まれたという「永福寺と子授け地蔵」という話がある。また、旧高井戸村には、玉川上水を掘る資金が底をつき死のうとした玉川庄右衛門が、白く光る玉石を見つけて決意を新たにした「玉石薬師物語」が伝わる。このように、歴史的な話であったり、教訓的な話であったりと、さまざまな伝説が掲載されており、バラエティに富んでいて読み物として面白い。
杉並のみの方言は、「いもめいげつ」(十五夜のこと)、「おすわさま」(融通がきかない人)、「けつまんぜえ」(頓馬な人。間抜けな人)、「しらみのもんどり」(インチキな織物)、にしゃどっち(ミノ虫)などがある。

※村名は本書の表記どおり
※叢書(そうしょ):一連の書物、シリーズのこと

『杉並の伝説と方言』の原稿(杉並区立郷土博物館所蔵)

『杉並の伝説と方言』の原稿(杉並区立郷土博物館所蔵)

森氏が方言を聞き取った時のメモ。五十音順にしやすいよう短冊状にしたと思われる(杉並区立郷土博物館所蔵)

森氏が方言を聞き取った時のメモ。五十音順にしやすいよう短冊状にしたと思われる(杉並区立郷土博物館所蔵)

DATA

  • 取材:進藤鴻一郎
  • 掲載日:2021年01月12日

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