郷土史家・森泰樹(もり やすじ)氏が『杉並区史探訪』の好評を受け、続編として1975(昭和50)年に出版。区内の旧家や神社仏閣を訪ね、古老や有識者から聞いた話をまとめた。庶民から見た杉並の歴史や伝説、大正時代の民俗としてわらべ歌、お念仏、流行歌、小学校校歌などを収録している。題字は谷川徹三氏(※1)。杉並郷土史叢書(※2)の2作目にあたる。
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おすすめは、「荻窪の昔話」というタイトルの、荻窪八幡神社で開催した古老座談会の記録だ。善福寺川に投網を打つと、二人でも引っ張れないほど魚が網にかかった話や、昭和の初めごろまではカワウソがすんでおり、人を見て逃げ込んだ際に水しぶきを頭からかけられた話など、今では想像もできない善福寺川の情景が語られている。
また、前作には、江戸時代末期の天保11年と翌12年に行われた土木工事「新堀用水路」が紹介されているが、本書では「新堀用水路工事記」と題して工法や費用などについてさらに詳しい解説を加え、この工事を「江戸時代の農政土木史に残る大事業」とたたえている。行方不明となっていた新堀用水路建設記念碑を森氏が竹やぶの中から発見する場面も詳細に書かれており、森氏の喜びが伝わってくる。
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※1 谷川徹三:哲学者。詩人・谷川俊太郎の父
※2 叢書(そうしょ):一連の書物、シリーズのこと