三鷹台駅近くの丸山橋から散策をスタート。この地域の神田川の水量はまだ少なく、蛇行しながら緩やかに流れている。神田橋を少し過ぎた頃から桜並木が続く。古木が多く、満開時には桜のトンネルのように神田川を覆う。
久我山駅を過ぎると川の水量が多くなってきた。この辺りでは、毎年6月の土・日に地元で人工飼育した蛍を放流し、幻想的な光を楽しむイベント「久我山ホタル祭り」が開催される。
川が深くなるにつれて、カルガモやマガモの群れも見られるようになった。神田川沿いではバードウオッチングも楽しめ、時にはコサギが小魚を狙っている姿を目にすることもある。また、神田川にはコイも多い。1972(昭和47)年に、ユスリカの対策として幼虫を食べるコイを放流することになった。その結果、コイが神田川を代表する魚になったという。
富士見ヶ丘駅近くの月見橋付近で川沿いから離れて寄り道し、個人商店が多い北口の商店街を少し歩く。右手に「地下スナック街入口」という気になる看板が見えた。この地下街は小さなバーやスナックが軒を並べている。昼間に唯一営業していた「蜃気楼珈琲」(しんきろうコーヒー)に入り、エチオピア産の浅煎(い)りコーヒーとカフェオレを注文した。この店は日替わりで店主が変わるシェアリング・コーヒースタンドで、この日はオーナーでもある田上さんが店主を務めていた。レトロな模様の床のタイルやアンティーク調の電灯が目を引く店内は、小さいながらも温かい雰囲気で、散歩の途中に立ち寄って一休みするのにぴったりだった。テイクアウトもできるので、コーヒーを片手に神田川散策に戻るのも良いだろう。
▼関連情報
蜃気楼珈琲(外部リンク)
月見橋に戻り、再び川沿いの遊歩道を歩く。高砂橋からあかね橋までは緑地が続き、むつみ橋から高井戸駅までは団地が並んでいた。
高井戸駅付近、佃橋から池袋橋辺りも桜の名所で、例年4月第1日曜日に高井戸駅前商店会主催の高井戸桜祭りが行われる(2021年はコロナ禍で中止)。
佃橋の北側には区立環境活動推進センターがあり、区の環境活動の促進を図る拠点となっている。その隣にある高井戸市民センターは、温水プールや図書館などの複合施設。広い休憩場やカフェも備えており、散策の途中に休憩できる。隣接する杉並清掃工場の煙突が壮観だ。
この高井戸市民センターや清掃工場周辺の土地には、旧石器時代から縄文時代・古墳時代・江戸時代に至る複合遺跡「高井戸東遺跡」が広がる。文化財案内表示板によると「1976(昭和51)年に清掃工場建設に伴う区道付け替えのために発掘調査されたもの」で、約28,000年前の石器も出土している。なお、出土した石器や土器類の一部は、大宮にある杉並区立郷土博物館に常設展示されている。
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 特集>お花見ポイント>神田川遊歩道
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のさまざまな施設>区立環境活動推進センター
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のさまざまな施設>杉並清掃工場
杉並区>杉並区教育委員会>74 高井戸東遺跡(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のさまざまな施設>杉並区立郷土博物館
佃橋から神田川沿いを10分ほど歩いて、区立塚山公園に到着。この地は旧石器時代から縄文時代中期の集落跡「下高井戸塚山遺跡」にあたる。学術的に重要な住居群とされており、3万年前の局部磨製石斧の出土でも知られる。管理事務所には石斧や土器の展示があり、園内には復元された住居と当時の人々の暮らしぶりが再現されていた。取材時(12月中旬)はもみじの紅葉も楽しめた。
塚山公園から、神田川と鎌倉街道が交差する鎌倉橋に出る。鎌倉時代に幕府がある鎌倉と東国御家人を結び、繁栄していたといわれる鎌倉街道を、今は車が頻繁(ひんぱん)に通行していた。
両岸に続くしだれ桜の並木を見ながら、この散策最後の橋となる八幡橋へ。すぐそばに下高井戸浜田山八幡神社があった。創建は1457年で、室町時代の武将・太田道灌(おおた どうかん)が江戸城築城の際の災難除けを祈願し、鎌倉の鶴岡八幡宮の神霊を新たに迎えて祀(まつ)ったことに始まったとされる。神田川沿いの散策の締めとして、本殿でお参りをし、神社をあとにした。
散策時間は約3時間に及んだが、都心の神田川のイメージと違う上流ならではの自然と、旧石器時代から江戸時代までの歴史に触れられた。太古からこの地で人々が生活していたという気付きもあり、感慨深い散策であった。
▼関連情報
杉並区>杉並区教育委員会>140 下高井戸塚山遺跡(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 特集>公園に行こう>区立塚山公園
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並の寺社>下高井戸浜田山八幡神社
「すぎなみ景観ある区マップ 高井戸・浜田山編」杉並区都市整備部みどり公園課