「こんにちは~。高井戸周辺をてくてくお散歩するよ。まずは高井戸駅からすぐの杉並清掃工場に行ってみよう!」
1982(昭和57)年竣工(しゅんこう)の杉並清掃工場は、2017(平成29)年に、現在の工場に建て替えられた。その際、周囲の住環境に調和させるようにと屋上や外壁を緑で覆い、工場の周囲には、樹木や花が植えられたウォーキングロードやビオトープが整備されている。
「わぁ~、間近から見上げる煙突は迫力があるね~!煙突の下には、きれいに手入れされた芝生や樹木が広がり、まるで公園に来たみたい」
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のさまざまな施設>杉並清掃工場
すぎなみ学倶楽部 歴史>【証言集】アンネのバラ 咲かせ続ける平和の願い
工場施設内にある「東京ごみ戦争歴史みらい館」では、1966(昭和41)年から約9年間にわたった「東京ごみ戦争」の歴史について、当時の映像や資料を見て学ぶことができる。
また、ごみ焼却の余熱を活用した「環境学習施設 高井戸の里 あし湯」も楽しめる。
「“あし湯”に入って、ゆっくり体を温めるのは気持ちいいよ。ごみ焼却の余熱は、隣接する高井戸市民センターの温水プールや冷暖房にも活用されているんだって」
杉並清掃工場を出て住宅地を歩いていると、「くりのないとう」の栗畑が見えてきた。
「あれ?白くてニョロニョロしたものが、いっぱい木から垂れ下がっているよ」
「なみすけ、こんにちは。これは栗の花だよ。最近は温暖化の影響で、少し開花が早まっているけれど、栗の花が落ちる頃が梅雨入りの時期ともいわれていますよ」と「くりのないとう」の内藤さんが教えてくれた。栗畑には、約400本の木が植えられており、8月中旬から10月上旬にかけて8種類の栗が収穫できる。そのおいしい栗を求めて多くの人が直売所を訪れるそうだ。
神田川を渡って南に向かって歩いて行くと、街路樹の間に立派な建物が見えてきた。1925(大正14)年、関東大震災で被災した高齢者を援護するために設立された浴風会。設立翌年にできた本館は、当時の面影を残したまま保存活用されている。名称の「浴風」は 『論語』先進篇(せんしんへん)の人間の幸福と思想を説く「浴沂之楽(よくきのたのしみ)」という逸話からつけられた。
「今回は特別に、浴風会の有坂さんに中を案内してもらえることになったよ」
バラの模様があしらわれた本館入り口の扉を開けると、まるでタイムスリップしたかのようにレトロな空間が広がった。有坂さんは「本館は事務所や応接室などで使っています。たまに施設内にある“よくふう保育園”の園児が遊びに来ますよ」と説明してくれた。
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並の景観を彩る建築物>浴風会 本館・礼拝堂(らいはいどう)
すぎなみ学倶楽部 歴史>記録に残したい歴史>高井戸の浴風園-高齢者福祉のさきがけ
有坂さんにお礼を言って、浴風会を後にした。
「そうだ!高井戸の鎮守、上高井戸第六天神社へお参りに行こう」
江戸時代初頭、上高井戸村の鎮守社だった神社だ。5分ほどで神社の入り口に到着。一礼して鳥居をくぐり中に入ると、近くに中央自動車道が通っているとは思えないほど、境内は静かだった。進んで行くと本殿の前に一対の小さな狛犬(こまいぬ)がいた。1771年に造立され、屋外に安置されている狛犬としては区内で最も古いといわれている。
「迫力のある狛犬が多いけど、ここの狛犬は素朴な雰囲気でかわいいね」
「紅兎(べにうさぎ)ブレンドティー」という紅茶を発見したなみすけ。「コーヒーが苦手な方も来店されますので、紅茶インストラクターにニルギリ(※)をベースにした、シフォンケーキに合う茶葉をブレンドしてもらいました」と古川さん。
「コーヒーだけではなく、紅茶にもこだわりが感じられるね」
例年4月1日のエイプリルフールには、1日だけ店名を変えるそうだ。
「次のエイプリルフールにはどんな店名になるのか楽しみだね」
休憩を終え、「環八」まで出てふと向かい側を見ると
「高井戸せんべいって看板があるよ。どんなせんべいを売っているのかな」
看板を出しているのは、おかきとせんべいの専門店「こがね堂」。
「いらっしゃい、なみすけ。うちの商品は防腐剤や保存料は一切使わず、昔ながらの製法で作っています。もち米やうるち米を原料に店の奥で作っているんですよ」とおかみさんが説明してくれた。
「たくさん種類があるよ。どれにしようかなぁ~」
おかみさんのお薦めで一番人気の「豆おかき」と詰め合わせを選んだなみすけ。
「散歩にきて、ご当地土産を買えるのはうれしいね」
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 食>スイーツ>こがね堂
「こがね堂」を出て、神田川に架かる佃橋(つくだばし)を渡った時、川面がパシャパシャと動いたのが見えた。
「うわ~、見て~!コイが3匹泳いでいるよ!」
1972(昭和47)年に、ユスリカ対策として幼虫を食べるコイを放流したそうだ。
「神田川沿いを歩いていると、黒いコイだけじゃなく、赤・金や白などのコイもあちらこちらで見られるよ」
「環八」から一歩中に入ると、とても静かで緑豊かな高井戸。
「神田川沿いは、桜もとってもきれいで春のお散歩も楽しめるよ~」
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並まちあるき>神田川上流、自然と歴史散策-丸山橋から八幡橋まで-
※ニルギリ:インドの紅茶の三大産地の一つ「ニルギリ」で生産される茶葉
第六天神社公式ホームページ
https://www.shimotakaido.org/tenjinja/keidai.html
「浴風会八十年の歩み」