シェアサイクルはサイクルポート(専用の自転車駐輪場)で自転車を借り、目的地の近くのサイクルポートで返却できる便利な移動手段。2024(令和6)年9月現在、区内には500カ所以上のサイクルポートが設けられ、鉄道やバスでの移動が不便な場所へ出かけるときや、区内を散策したいときなどに使用できる。
「シェアサイクルでお手軽ツーリング(前編)」では京王井の頭線沿線エリアを巡る約7kmのコース①を紹介した。後編では、西武新宿線沿線エリアを巡る約11kmのコース②と、JR中央線沿線エリアを巡る約16kmのコース③をシェアサイクルで走った模様を紹介しよう。
西武新宿線沿線エリアを巡るコース②は約11km。杉並区役所から区の西部に向かい、公園や寺社を見物した後、西武新宿線下井草駅でゴールするプランだ。
このコースで乗車したのはドコモ・バイクシェア。走り出すと、前輪の空気が少なくなっていることに気づいた。そこで道すがら自転車店に立ち寄り、空気を入れてもらった。このような事態を避けるためにも、乗車前にはタイヤの空気やブレーキハンドルの動きを欠かさずチェックしておくと安心だ。
杉並区役所を出発して、中杉通り、早稲田通りを走行し、永久橋を渡らず左折し妙正寺川沿いの小道を走行。空気入れの時間を含めて20分ほどで杉並区立妙正寺公園に到着した。妙正寺川の水源である妙正寺池を眺めていると、穏やかな時間を過ごすことができる。
妙正寺公園から次の目的地の杉並区立桃井原っぱ公園へは、最短距離なら約5分。しかし風格のある妙正寺の本堂を眺めたり、通りがかりで見つけた暗渠(あんきょ)の上を走ったりして、15分ほどかけて移動した。徒歩より速く移動できるが、徒歩のときと同じように道中でさまざまな発見ができるのがツーリングの楽しみの一つだ。
取材時は夏休み中だったこともあり、桃井原っぱ公園では子どもたちが水遊びに夢中だった。そんな様子を眺めながら、公園内にある「旧中島飛行機発動機発祥之地」の石碑を見学。戦中まで航空エンジンを開発していた中島飛行機東京工場があったことを今に伝えている。
再び自転車にまたがり、西へ。青梅街道に出ると間もなく左手に井草八幡宮のシンボル、大鳥居が見えた。初詣の時期には出店が並ぶ参道や広い境内を歩き、拝殿で道中の安全を祈った。
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井草八幡宮から東京都立善福寺公園へは5分もかからない。道中にやや急な下り坂があるので、スピードの出し過ぎには注意だ。緑が生い茂る場所が見えてきたら、善福寺公園に到着。自転車を手で押しながら池の周りを歩くと、水辺の爽やかな空気に触れられて、これまでの疲れを癒やしてくれるようだった。
西武新宿線沿線エリアを巡るコースもラストスパート。善福寺公園から上井草駅へ向かう道中には、行きの下り坂が上り坂になって立ちはだかる。だが、自転車の電動アシスト機能のおかげでペダルは軽く、楽に上って行ける。
上井草スポーツセンターを左手に眺め、西武新宿線の線路の手前で右折。商店街の中を走れば間もなく上井草駅だ。かつてこの地にあったアニメ制作スタジオ・サンライズの代表作「機動戦士ガンダム」のモニュメントが、今も変わらず駅前に設置されている。
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西武新宿線の南側に広がる商店街を走り、やがて井荻駅を通過。線路北側の道に移ってアニメ制作プロダクション・株式会社ボンズの社屋を左手に見ながらさらに東進し、上井草駅を出てから10分ほどでゴールの下井草駅に到着。井草1丁目のサイクルポートで自転車を返却した。その近くにある博多長浜とんこつラーメン 御天井草本店に寄ってラーメンを注文。真夏の炎天下で疲弊した体にガツンとしたスープが体に染みわたり、疲労が飛んでいった。
ドコモ・バイクシェアの自転車はやや小径のタイヤを備えるが、小回りがきき、操縦がしやすい。モーターの補助も楽にこげるように調整されており、快適にペダルをこぐことができた。
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JR中央線沿線エリアを巡るコース③は約16kmと、今回紹介する中では最長だ。杉並区役所から阿佐谷、荻窪、高円寺エリアの順に回り、公園や体験施設などを楽しみつつ、ゴールの高円寺駅に行くプランである。
このコースではLUUPに乗車。これまで紹介したハローサイクリング、ドコモ・バイクシェアの自転車よりもタイヤのサイズが小さく、同じ距離を進むのに余分にペダルをこがなければならない。それを補うためかペダルの電動アシスト力は強く、少しのこぎ出しで速いスピードに到達してしまうこともあり、運転にはやや慣れが必要だ。
杉並区役所を出発し、パールセンター商店街を横断して阿佐谷の住宅街へ。この一帯は道が入り組んでいるので、スマートフォンの道案内があると便利だ。LUUPの自転車にはスマホホルダーが設置されているので、適宜活用しよう。
住宅街の曲がりくねった道を進みながら、JR中央線の高架をくぐる。区役所を出発して15分ほどでAさんの庭に到着。かつてこの地には、アニメーション映画監督の宮崎駿さんが「トトロが喜んで住みそう」と評した家があった。公園内にある昔の家の案内板を眺めていると、当時の生活に思いをはせることができる。
Aさんの庭から東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアムへは約4kmの道のり。早稲田通りに出た後、日大二高通りへ。この道は幅が狭く路線バスも通るのでキープレフトを維持しながら注意して走行する。しばらくすると無事に四面道交差点に着き、右折。荻窪警察署前交差点を曲がれば、杉並アニメーションミュージアムに到着だ。
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区内に多くのアニメ制作関連会社があることから、アニメ産業の支援の一環として誕生した杉並アニメーションミュージアム。アニメ制作の歴史や、制作の流れなどを見学できるほか、各スタジオの最新作のポスターなども展示。取材日に開催されていた特別展では、アニメ制作の一行程である「撮影」も体験できた。アニメに関する理解をとことん深められる施設だ。
この後は、荻窪駅まで出てカフェなどで休憩をとってもよいが、今回は次の目的地である杉並区立杉並児童交通公園を目指す。一旦南に向かい、善福寺川の川沿いを走行。中央線の高架をくぐり、環状8号線を横断し、東京都立善福寺川緑地を抜けて五日市街道へ。交通公園入口交差点を右折すれば、ほどなくして杉並児童交通公園だ。ここまで約5km、20分ほどの道のり。公道を模した園内を散策したり、保存展示されている蒸気機関車を眺めたりしながら、しばし休息をとった。
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五日市街道へ戻り、東へ向かって自転車を漕ぐ。2.5kmほどの距離を約10分かけて走り、堀ノ内妙法寺に到着した。電車での移動が難しい場所へも、自転車ならスムーズに行けるのがいいところ。時間は夕方5時を過ぎ、夏の太陽も西の空に姿を隠しつつあった。暮れなずむ境内では、老若男女が、まだ暑さが残る夕方の散歩を楽しんでいた。
自転車は杉並区立高円寺中央公園のサイクルポートに返却した。区の把握しているデータでは、ここは区のサイクルポートの中でも多く利用されてるという。しっかり鍵をかけて、自転車のかごやスマホホルダーに忘れ物がないかをチェックしよう。
ゴールの高円寺駅周辺には、ツーリングの疲れを癒せる飲食店や、土産を買えるスイーツ店がいろいろある。昼間なら駅から徒歩約5分の科学体験施設「IMAGINUS(イマジナス)」に遊びに行くのもおすすめだ。サイエンスショーの観覧や科学実験などが楽しめるだろう。
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