「好き」が集まる文化の息づく街
吉祥寺駅と荻窪駅に挟まれたJR中央線の西荻窪駅は、土日祝日は快速電車が止まらない。少し不便だが、その不便ささえ愛しく感じるのがこの街の魅力だ。
駅周辺には小さな個人商店が軒を連ね、古いものを大切にし、手間をかけることを愛し、こだわりを追求し続けている。
駅から少し歩けば閑静な住宅街が広がり、緑も豊かだ。花見の時期には多くの人が集まる「都立善福寺公園」や中島飛行機東京工場跡地で今は子供たちの憩いの場となっている「区立桃井原っぱ公園」がある。「区立坂の上のけやき公園」にある区内最大の幹周りで貴重木にもなっていた一本の大けやき「トトロの樹」は街のランドマークである。
西荻窪駅から徒歩圏内には、骨董(こっとう)を扱う店が約40軒ある(2020(令和2)年3月現在、西荻窪アンティークマップ製作委員会調べ)。骨董店巡り・古書店巡りには、各骨董店に置いてある「西荻 古本とアンティークマップ」(西荻窪アンティークマップ製作委員会発行)が便利だ。
西荻窪はチェーン店が少ない。こだわりの詰まった小さな個人商店が軒を連ね、愛され続けている故である。土日となれば、地図を片手に街歩きをしている人を多く見かける。地図は西荻案内所が毎年発行している「西荻まち歩きマップ」が秀逸だ。駅に設置されているラックや掲載店などで入手できる。
純喫茶のイメージが強い西荻窪だが、近年ではパンやスイーツ、カレーの店も増えている。また、さまざまなワークショップやイベントを開催している店が多いのも特徴だ。スペースを貸してくれるところもあり、趣味や副業で何かを始めたい人への受け入れも柔軟だ。
まずは目についた店に立ち寄りながら街を巡るだけでも西荻の良さを感じることができる。ただし、週末しか営業していない店もあるので営業日は事前に確認しておくことをおすすめする。
西荻窪駅から北東に徒歩19分ほどのところにある広々とした「区立桃井原っぱ公園」では、例年11月初旬の2日間、「すぎなみフェスタ」が開催される。ステージイベントが催され、遊びや食べ物のテントが多数出店する区内最大級の複合イベントだ。
駅の北西、武蔵野市との境界近くには善福寺池が広がる「都立善福寺公園」があり、毎年11月の3週間は国際野外アート展「トロールの森」が開催される。緑の中で大人も子供も一緒に楽しむことができるイベントが目白押しだ。
商店街が東西南北に広がり、それぞれの商店街の個性が集まって西荻窪を形成している。
1975(昭和50)年から続く「あさ市」で知られる商店街。
西荻窪駅から五日市街道に向かって延びる旧府道に位置する商店街。行列必至のカレー屋や甘味処、かわいい雑貨屋が並び週末は地元の人や観光客でにぎわう。
アンティーク屋が集まる骨董通りを擁する商店街。1932(昭和7)年に建てられた井荻会館は、手しごとの作品や骨董などと出会えるイベント会場として使われている。
東京女子大学の南側にある商店街。毎年8月最終の土日に「盆踊りと縁日の夕べ」を開催している。普段バス通りの商店街がこのときだけ盆踊り会場になる。また、東京女子大学の「VERA祭」の際もにぎわいを見せる。
西荻南口仲通り会の商店街のアーケード天井にぶら下がっている。9月の荻窪八幡神社の例大祭では、商店会の催しとして、子供たちに引かれて町内を練り歩く。初代の象が登場したのは1977(昭和52)年頃。神輿(みこし)を担げない小さな子供たちのために代わりになるものを竹細工屋へ探しに行き選ばれた。当初は竹細工のまま使われていたが、何度目かの修理のときに、紙を貼ってピンク色になった。2017(平成29)年に三代目に交代。竹細工屋の減少に伴い、素材はリニューアルしたが、ピンク色のトレードマークは引き継がれ、西荻窪の不変のアイドルである。